先月実施されたルーマニアの大統領選挙で首位になった、カリン・ジョルジェスク氏。肩書は大学の教員と伝えられているが、それ以外の詳しいことは分かっておらず、当初は無名の候補者だった。支持を広げた要因と見られるのがSNS。ジョルジェスク氏は主にSNSのTikTokに短い動画を投稿し、主張を展開。物価の高騰がEU加盟国の中で最悪レベルで経済的に厳しい状況が続く中、政治への不満を持つ人たちの支持を集めた。SNSで選挙戦を展開した候補が本命視された現職の首相も上回って首位に立ったことで、驚きが広がった。一方で、ウクライナへの支援は“明確に反対”と強調。ロシア寄りの主張を掲げている。ジョルジェスク氏の躍進について、SNS上の偽情報の監視などを行う欧州デジタルメディア監視機関は、選挙直前にTikTok上でジョルジェスク氏の露出が急増したことに着目した。インフルエンサーや“ボット”と呼ばれるコンピュータープログラムによる拡散といった組織的な活動抜きにはなしえない規模だと指摘している。ルーマニア政府は“ロシアによる介入の標的となった可能性や動画の拡散には、多数のインフルエンサーが関与し、親ロシア感情などを広めることをもくろむ勢力も関わっている”などと指摘している。こうした中、ルーマニアの憲法裁判所が下したのは、先月の選挙を無効にするという判断だった。名指しは避けたがジョルジェスク氏のSNSの利用を問題視していて、“デジタル技術の不透明な利用により有権者の投票が誘導され、候補者どうしの平等な競争がゆがめられた”としている。大統領選挙を分析した研究員は、SNSの活用の効果と課題の双方を示したと指摘する。