日本製鉄のUSスチール買収をバイデン大統領が阻止したことを巡り、ブリットCEOは「重要な同盟国の日本を侮辱している」「北京では中国共産党の指導者たちが街頭で小躍りしている」などと批判している。身売りの足止めは経営再建がさらに困難となることが想定される。日本製鉄はアメリカ市場への参入見直しが必要となり、約900億円規模の違約金を支払うことも懸念される。また、バイデン大統領が阻止に動いた背景には鉄鋼労組・USWのマッコール会長が反対の立場にいることや、トランプ氏が買収阻止を手柄とするのを警戒した側面があると見られる。これに対し日本製鉄とUSスチールは対米外国投資委員会は適正手続に基づく審査を行わず、バイデン大統領についても国家安全保障に無関係な政治的理由により大統領令を発出したとして訴訟を行っている。USスチールのライバルであるクリフス社とUSWについても、共謀して反競争的かつ組織的な違法活動を行ったと主張して差止命令と損害賠償を求める方針。クリフス社を巡ってはマッコール会長が支援を行い買収を提案したが条件は日本製鉄の半額ほどという値段であったことで選ばれていなかった。中林氏は大統領選の中でトランプ氏が買収阻止を主張する中、バイデン氏も買収阻止に動かざるを得ない状況だったと紹介。八代さんは裁判についてアメリカの司法は安保上の懸念を行政側の裁量を重視して考える傾向にあり権限の濫用を証明できなければ難しいのではないか、選挙目的が理由と立証できなければ厳しいとコメント。
これまでCFIUSは中国などによる買収を中心に阻止してきた中で日本企業に対しての買収を阻止する形となった。これを受けて日本製鉄とUSスチールはCFIUSとバイデン大統領への訴訟を行っているが、行政訴訟と民事訴訟を並行して行う戦略を取った背景について見てみると、民事訴訟であれば大統領とUSW会長らの電子メールとチャットが開示される可能性があり、行政訴訟の材料となる事があるという。橋本英二会長は「勝訴のチャンスはある」と言及している。実際に2012年には当時のオバマ政権が中国資本による風力発電事業の買収を認めなかったものの、当時の裁判所は企業側の主張を指示する判断を出していた。中林氏は経済的には好影響が予想されるが、トランプ氏が主張を覆すことは難しいのが現状と紹介。