全分野で妥結できなかったことは、アメリカ政府にとっては誤算だった。IPEFでは、経済連携で重要な関税の撤廃などが含まれないが、東南アジアと連携を強め、対中国で包囲網を敷くという狙いがあった。来年秋に大統領選挙を控えるなか、IPEFが自国で開かれるこのタイミングで、目に見える成果を打ち出したいという思惑があったが、今回は時間切れとなった形だ。貿易の分野で妥結が先送りされたことは、日本政府にとって、驚きもあった。妥結が先送りになったことで、バイデン政権にとっては、米中首脳会談に有利に臨めるほどのカードになったとは言えない。貿易の分野のうち、「自由なデータ流通の促進」は、アメリカ国内から、大手IT企業を利するだけだという反対を受けて、妥結を見送らざるを得なかった。今後、IPEFを中国対抗の実績に掲げられるかが焦点だ。IPEFは、市場開放を伴う関税の撤廃などが交渉されない分、新興国にとって参加のメリットが乏しいと指摘されている。日米で連携し、新興国への資金協力などで、つなぎとめを図りたい考えだ。中国が輸出入の規制などで、貿易相手国に圧力をかけるなか、日本としては、サプライチェーンを維持する意味でも、IPEFなどの経済連携の枠組みが必要だと考えていて、日米で結束して、残る分野の結束を目指す構えだ。