日産とホンダの統合の背景について、井上は「台湾の鴻海による買収の動きが加速したため、ホンダと日産の協業の話も早まった可能性がある」と指摘。台湾の鴻海精密工業は、ITや電子機器の受託生産として世界的な大手企業。米国・アップルのスマートフォン「iPhone」の受託生産で大きく成長した。2016年に債務超過に陥った電機大手のシャープを傘下に収めて注目された。EV事業を担う最高戦略責任者は関潤氏で、2023年に就任し、元日産の副COO(最高執行責任者)を務めていた。2019年にカルロスゴーン氏が失脚後の新体制への不満から日産を去った。井上は「ゴーン時代に日産を支配したフランス・ルノーには手放していない日産株がある。この株を鴻海が引き受けるなどの案が検討されていた」と指摘。ホンダにも急ぐ理由があった。EV事業で手を組もうとしていた日産が鴻海に買収されれば、ホンダの成長シナリオが崩れる。しかも国内で日産に代わる相手を見つけるのは難しいとの理由から、ホンダを突き動かしたのではないかとみられている。