ワシントン支局の小田島記者の解説。なぜ0.5%という大幅な利下げを決めたのだろうか。パウエル議長が後れを取らないという決意と表現したとおり、これまでの高い金利の悪影響、これが雇用に広がる前に手を打ちたいということだと思う。インフレの要因となってきた強い労働市場は様変わりしている。この2年余り、全米各地の飲食店や企業を取材してきたが、これまで人手不足で困っていた企業が今では採用を絞る動きを取り始めている。職探しをしている人も仕事が見つかるまでに長い時間がかかるようになったとため息交じりの声も聞かれる。今後の利下げの見通し、そして米国経済はどうなるのだろうか。パウエル議長は0.5%の大幅な利下げが標準ではないとの考えも示している。今後の大幅な利下げを期待していた投資家は肩透かしを食った形でニューヨーク株式市場の株価下落にもつながった。FRBは過去インフレの動向を見誤って対応が遅れたという苦い苦い経験がある。パウエル議長も記者からインフレに対する勝利宣言かと聞かれて、明確に違うと否定し、任務完了といえる状況ではないと発言している。失業率の大幅な上昇など景気後退を招くことなくインフレをいかに完全に抑え込むことができるのか。利下げという新たな金融政策のステージに入り、バランスの取り方、難しい局面を迎えていると言えそう。