円相場について。外国為替市場は不安定な状況が続いている。7月以降のドルに対する円の値動きを紹介(グラフ)。7月3日には1ドル=161円90銭台と記録的な円安となったが、中旬以降は日米の金融政策の思惑から、円高方向に動くようになった。そして31日に日銀が追加の利上げに踏み切ってからはさらに円高が進み、今月5日には1ドル=141円60銭台まで値上がりした。今は1ドル=145円台となっている。この振れ幅の大きさには、円キャリートレードが影響したという指摘がある。円キャリートレードは、投資家が金利が低い円を借りて、ドルなどの金利が高い通貨に替えて運用、それによって利益を得るという投機筋の取り引きのこと。両替する過程で円を売ってドルを買うため、この取り引きが膨らむと円安が進みやすくなる。こうした取り引きが円安を加速させた。IMM通貨先物ポジションのことし1月からの推移を紹介(グラフ)。先物取引で円を売ろうという動きが買いを大きく上回る“売り越し”が上方向で、このポジションが多いと円安になりやすい。ことしは売り越しの状態が続いていた。ところが7月下旬になると急に減少し、直近の今月13日は買い越しになり、円を買う動きが勢いが売る勢いを上回った。あおぞら銀行・諸我晃チーフマーケットストラテジストは「日銀の利上げ、米国の景気悪化といった指標が出たことがきっかけだったと思うが、それを受けて結構過大に積み上がっていた円売りポジションが大きく巻き戻された。めったにないというか初めて見るくらいのスピード感だと思う」、円キャリートレードの今後の見通しについて「日米の短期金利差という点だと今はまだ5%以上あるので、円キャリー取引というのは、やるインセンティブはまだ強いと思う」と述べた。今、投資家が注目しているのが、23日に米国のジャクソンホール会議で予定されているFRBのパウエル議長の講演。次回9月の会合で予定している利下げのペースについてどのように言及するのか、市場関係者は高い関心を寄せている。