1988年に開催されたソウル五輪の競泳男子100mの背泳ぎ決勝で鈴木大地が爪を伸ばして勝利し逆転金メダルに。このレースは後半に大逆転劇があり、ライバルは予選で世界新記録をマークしたデビッド・バーコフ。鈴木は勝利するために3つの秘策を用意していた。その代名詞はバサロ。水中で仰向けのままドルフィンキックで進む泳ぎ方で水の抵抗が少ないので水面に出るよりも速く泳げるという。しかしその分腰や心肺機能への負担が大きく、人一倍強靭な肉体が求められ、鈴木はダンベルを持ち水中でドルフィンキックをするというトレーニングをしキック力を強化。長時間のバサロを習得した。さらにバーコフは先行逃げ切り型で重圧に弱いと睨んでいた鈴木は前半はバサロで食らいつき勝負は後半と考え徹底的にスタミナを強化。3つ目はゴール時の腕の動き。最後は100分の1の争いになると考え少しでも速くタッチできるようにあえて爪をのばしていたという。またタッチする腕の動きにも秘密が。その対策の甲斐もあり、鈴木は20センチ差で勝利した。勝負をわけたのは腕の使いかた。よくみると背泳ぎなおにも関わらず、タッチの瞬間だけは折れ曲がっている。肘をたたんでゴール板に指を突き立てる骨折覚悟のタッチだった。