アメリカ・トランプ大統領が購入に意欲を示しているデンマーク領グリーンランド。大部分が北極圏にある世界最大の島でアメリカとロシアの間に位置している。軍事面だけでなく、資源開発など戦略的に重要な場所でアメリカやロシア、中国が影響力の拡大を狙っている。グリーンランドで11日、議会選挙が実施された。争点は主に2つで1つがトランプ氏購入発言への対応。2つ目がデンマークからの独立だった。選挙では、トランプ政権との関係強化に慎重な与党が敗れトランプ氏発言に反発はするもののアメリカとの関係を重視し独立を段階的に推進する立場の野党民主党が勝利した。グリーンランドは日本のおよそ6倍の面積だが、その8割は氷に覆われていて、人口わずか5万7000人。議会の定数は31。アメリカ・トランプ大統領が購入に意欲を示しているデンマーク領グリーンランド。1979年に獲得した自治権のもとで議会と政府を持っている。現在の主力産業は漁業。甘エビなどの海産物が日本にも輸出されている。ただ最近、周辺海域で永久凍土が溶け始めた。そこで注目が集まっているのが地下資源。金や石油以外にもスマホやEVに欠かせないレアアースなど、世界有数の地下資源が眠っているとされている。このグリーンランドでは予算の半分ほどをデンマークからの補助金に依存。完全な独立を求める声はあるものの経済的な自立は道半ば。そこに目をつけたのがアメリカ・トランプ大統領だった。アメリカはロシアとの間に位置するこの島にミサイルを監視する部隊を配置。さらに去年、中国海警局の船が初めて北極海を航行した。流氷などが少なくなっているため航海が容易になっているという。大国の思惑に揺れる中トランプ氏はグリーンランドを手に入れると繰り返し発言している。世論調査では85%の住民がアメリカへの編入に反対。専門家はトランプ氏の発言が独立の機運を加速させたとしている。デンマークからの独立に関連してグリーンランドは長年、経済的自立を目指すために中国と接近してきた。例えば、現在レアアース採掘に向けて調査をしている企業の中には表向きはオーストラリアの会社だが、株主が中国企業といったケースもある。また北京には2021年からグリーンランド自治政府の代表部が置かれ中国企業への出資を呼びかけている。こうした中国との結びつきにアメリカ側が抱いていた強い懸念がトランプ大統領の購入発言につながったという見方もある。前回の選挙でも資源開発が争点で環境汚染への懸念から後ろ向きだった現在の政権与党が勝利したが、今回の結果で資源開発に関してはより前向きに検討が進むとみられる。ただ、中国などの接近を懸念する声もあるため今回、勝利した民主党はアメリカとの投資を含めた関係強化に前向き。