マーケットでスタグフレーションへの懸念が広がる中、マクロ経済を分析する専門家はどう見ているのか。取材したエコノミストはFRB)の動きがカギを握るとみている。ノムラセキュリティーズインターナショナル・デイビッドシーフ氏は「相互関税は我々の予想も市場の予想も超える規模で、間違いなく経済成長に打撃。ただ景気後退になるとは思わない。今年のアメリカのGDP成長率は1%未満にとどまるだろうが、本格的なマイナス成長に陥るとは考えていない」と述べた。アメリカのGDPについて、輸入が減少すれば、押し上げられることから、表面上プラス成長が続くとみている。ただ実体経済の活力はそがれると警告。シーフ氏は「アメリカのGDPの7割は個人消費。今後は個人消費の伸びがGDP全体の伸びを下回る可能性がある。アメリカ国民にとって成長を実感できない状況になるかもしれない」と述べた。気になるのがFRB)の動向。相互関税で金融政策はどう変わるのか。氏は「相互関税による物価上昇圧力は、10−12月期までにはある程度緩和するだろう。いきなり高い関税が課されのは、経済に急激なショックを与えるが、同時にショックは短期間で収束するだろう。状況が落ち着けばFRBは12月にも利下げを再開できるだろう。その後も金利を引き下げ、最終的に3%台半ばに到達するとみる。FRBは期待インフレを2%で固定し、相互関税による一時的な物価上昇がサービス価格や賃金上昇の加速につながるような危険な状況を防がなければならない」。関税への警戒で軟調に推移する株式相場。過去の調整局面では、トランプ大統領が株価を支えるため、口先介入するケースもあった。シーフ氏は「トランプ大統領が関税であまり譲歩せず、FRBもすぐには利下げしないとみている。「トランププット」や「FRBプット」は短期的には期待できない。大統領もFRBも介入しなければ、株式相場はさらに下落する余地はある」と述べた。