中標津町にある「OSAKA FARMS」の纓坂さんは2年前に父親から経営を引き継いだ。総工費7億円をかけて牛舎を建設し、餌やりを自動で行える設備も導入した。経営規模を2倍にする計画だったがすでに暗礁に乗り上げている。多額の投資を踏み切った背景には大規模化を促す国の政策があった。酪農家の高齢化などで生乳の生産が減少傾向にあった2014年にバター不足が起き、翌年に国は投資の半分を補助する「畜産クラスター事業」を打ち出した。TPPによる乳製品のさらなる貿易自由化に向けた国際競争力強化も目的だった。さらに国は生乳の需要が増えるとして2030年度に生産を年間780万トンに拡大する目標を掲げ、餌が安く経営が順調だった酪農家たちは規模を拡大し生産量は増加した。その矢先に新型コロナウイルスの感染拡大が起きた。学校給食用の牛乳、観光の需要などが落ち込み生乳の生産が過剰になり、北海道の生産者団体が生産抑制を酪農家に要請する事態となった。国の事業を利用し規模を拡大した纓坂さんは、飼料高騰で赤字が続き借金が4億円近くにのぼった。ドリームヒルの小椋社長は50年前に親から牧場を引き継ぎ国内最大規模の牧場にまで育ててきた。小椋社長は「こんな状況になったらこの規模が足を引っ張っている」と話した。この1年半、全国で1100を超える酪農家が離農し、乳牛の数は5万6000頭以上減っている。国は食料・農業・農村基本法の来年の改正に向け議論を進めている。
住所: 北海道河東郡上土幌町字居辺東7-277