人口約170万人のスペイン・バルセロナ。これに対して去年1年間の宿泊者数はその7倍の1200万人余りにのぼった。バルセロナでは約10年前にホテルの新規建設を制限し3年前に新たな観光税も導入した。それでも観光客が増えすぎ、観光客に抗議する声も上がっている。背景にあるのは民泊の存在だ。市内で約1万件に上っている。こうした中、バルセロナ市は今年6月、市内全ての民泊施設を2028年までに廃止する方針を打ち出した。バルセロナでは住宅不足により家賃はこの10年で平均68%上昇している。このため市は民泊施設を賃貸向けなどに利用したいと考えている。一方、観光客の増加が拍車をかけ、住宅のオーナーにとっては賃貸よりも民泊施設の方が利益が高く見込める状況になっている。中には住民に影響を及ぼすケースも出ている。市内の賃貸アパートに住む女性は部屋の契約があと2年残っているがアパートの退去を迫られるのではないかと不安を抱えている。すでに120ある部屋の約3割が民泊用に転用されている。退去した場合、市内で賃貸物件を見つけるのは難しく、同じアパートに住む友人とともに支援団体に相談している。一方で市の方針に対し民泊施設のオーナーなどは反発を強めている。観光に詳しいエコノミスト・ミケルプチさんは「観光客の数を制限し観光客が使う単価を上げていくしかない」と話した。オーバーツーリズムは日本でも深刻な問題になっていて、今年9月に日本を訪れた外国人観光客は287万人あまりでコロナ禍前の2019年を上回り過去最高を記録した。京都では公共交通機関などの混雑に加え、民泊施設の増加で住宅地でも観光客が夜中まで騒ぐケースやゴミのポイ捨てなども問題になっている。世界の観光地では様々な対策が行われておりフランス・シャモニー周辺では来年5月〜民泊を許可制に、オーストラリア・ビクトリア州では来年1月〜民泊収入に7.5%課税を導入し自治体ごとに民泊禁止・制限を可能にしている。