農林水産省で、コメの価格高騰に対応するため小泉大臣肝入のチームが発足した。切り札として示されたのが、政府備蓄米の随意契約。これまでの競争入札をとりやめ、国がスーパーなどに直接売り渡す。目指す店頭販売価格は、5kgあたり税抜きで2000円。需要がある限り出し続ける考えで、売り渡し先は年間1万t以上を取り扱う大手小売業者。ただし従来の備蓄米のように銘柄米とブレンドすると単価が上がり、2000円は実現できない。小泉大臣は今後、一般的なブランド米とブレンドされた備蓄米、今回の備蓄米と3つの価格帯の商品が店頭に並ぶと説明した。今回売り渡されるのは、2022年産の「古古米」と2021年産の「古古古米」。味に敏感な消費者がそうした米を手に取るのか、小泉大臣は「それぞれ多様な消費者の方の判断がある」などと述べた。今回放出する備蓄米は「玄米でも精米でも販売可能」、「ブレンドするのも自由」、「価格のつけ方も自由」、「品質には問題なし」というのが、農水省の見解。ドンキホーテを運営するPPIHの初山俊也常務執行役員は、「売価においても競争するべき。2000円以下でいけるならいく。私たちは十分ほかで利益をとることができるので、米に関しては利益を求めない形でやる」などとコメントした。生活用品大手のアイリスオーヤマは、説明会の終了を待たず契約を申し込むメールを農水省に送った。ひとまず1万tを調達し、精米後は銘柄米とブレンドせず「政府備蓄米」と銘打って売り出すことを考えている。一方で、中小のスーパーや街のコメ店のほとんどは随意契約の対象とはならない。東京都目黒区の飯塚精米店は年間の取扱量が約30tだといい、しばらくは静観する構え。コメ価格の「官製値下げ」には、自民党内から「農畜産物は再生産ができる価格で市場で評価されることが大事。安ければ良いというものではない」などの声があがっている。沖縄県の石垣島では早くも実りの季節を迎え、農家には引き合いが相次いでいた。二期作が行われている石垣島の農家は、「今年は儲けが出る」と試算していた。その矢先に備蓄米の放出が示され、「『コメは2000円で出る』と思われたら困る」などと話していた。