カンボジア シェムリアップ州で筑波大学の下田一太教授は長年調査を続けてきた。約900年前に作られたアンコール王朝を象徴するアンコール・ワットをジャングルからフランス人が19世紀に再発見したが20世紀の内戦により調査は中断された。下田教授は裏参道に行き森の中でライダーのデータで調査、その場所には人工的に作られた大きなため池があったという。衛生画像ではライダーの地図によりため池の跡とされるくぼみが浮かび上がっていた。LiDARはレーザーを当て物体をスキャンする最新技術で光が跳ね返る時間差を測ることで物体の距離や形状を計測することができる。カンボジアで初めて大規模な測量が行われたのは2012年ダミアン・エバンズなど7カ国の研究者が共同で調査し結果東京23区を超える巨大都市の姿が浮かび上がった。LiDARでは規模だけでなく暮らしの詳細まで見えた。ハウスマウンドと呼ばれる盛り土からは米などの生活の形跡が発掘され住居跡であると判明、ため息などの数から約3000人が境内に住んでいたと考えられるという。また隣接の王都アンコール・トムのデータを解析すると3キロ四方の都市に碁盤の目のように貼り巡っている水路があり平らな土地に水を巡らす優れた水管理システムの水利都市が見えてきた。最新データで再現された当時の暮らしは寺院の周りに農村が広がり雨季乾季の差が激しい中古代クメール人は水を管理することで年複数回米を作り豊かに暮らしていた。2023年にLiDAR測量を引っ張ってきたエバンズ博士が亡くなり意思を引き継いで下田教授は水管理システムの原点、水路壕が実用性のためだけに作られたのではないということを解明したいという。50km離れたクーレン山は聖なる山と呼ばれ地域を流れる川の源流で、古代クメール人が作ったダムは変わらない姿で残るがこの一帯は20世紀の内戦の激戦地で多くの地雷が埋められ考古学調査が遅れていた。LiDARによってこのダムが9世紀の古代都市網の一部だと判明、ダムの延長線上に格子状に薄く土を盛り上げ作ったもの、シェバンス博士によると水路ではない東西を正確に示したものがあるという。下田教授はアンコール王朝よりさらに前のサンボー・プレイ・クックを調査し思想の源流を探っている。LiDARでは見えない地中の構造物を探知できるGPRで名も無い寺院M45を調査、結果地中に道などの構造物を示す反応がであり、中央の建物からまっすぐ伸び両脇に木造建物がありダムまで続く参道だったと推測できるという。シヴァ神の象徴のリンガがありクーレン山にあったものと同じだった。水を通して神の恩恵が街中に行くように設計されたアンコール都市となったという。