去年12月、日本製鉄は粗鋼生産量で全米3位のUSスチールを買収することで合意した。アメリカでの事業をさらに強化すること、両社が持つ環境技術を組み合わせることで脱炭素への対応を加速させる狙いがあるという。だが、全米鉄鋼労働組合は合併に強く反対している。2000年代前半、アメリカの鉄鋼業界は日本から輸入される鉄鋼製品に押され、日本企業への反発が強まっていた。ブッシュ政権は鉄鋼製品に高額関税を課す措置に踏み切ったが、日本側は国際ルール違反と訴えた。アメリカ大統領選挙を控えるなか、USスチールのあるペンシルベニア州は全米で選挙人が5番目に多い。16年にはトランプ元大統領が勝利し、20年にバイデン大統領が奪い返した。今回もペンシルベニア州での勝利が不可欠と言われるなか、トランプ氏は日本製鐵による買収を批判し、大統領に就任した暁には買収を認めないとしている。労働者の味方をアピールすることで、製造業の多い中西部の有権者の支持獲得を狙っている。また、大統領時代には海外からの鉄鋼製品に対し、国家安全保障を理由に追加の関税を課したことがある。
再選を目指すバイデン大統領にしても、労働組合を敵にまわすわけにはいかない。日本製鐵は今回の買収がUSスチールの従業員を含め、アメリカへのマイナスが生じないことを説明したいとし、労働組合とも一致点を見つけたいという。ただ、日米間の買収劇は大統領選挙の渦に巻き込まれ、波乱含みの展開になることも予想される。
再選を目指すバイデン大統領にしても、労働組合を敵にまわすわけにはいかない。日本製鐵は今回の買収がUSスチールの従業員を含め、アメリカへのマイナスが生じないことを説明したいとし、労働組合とも一致点を見つけたいという。ただ、日米間の買収劇は大統領選挙の渦に巻き込まれ、波乱含みの展開になることも予想される。