ドネアを破り、世界のボクシング4団体のうち3本のベルトをそろえたモンスターの次なる戦いは、バンタム級WBO王者・ポールバトラー。勝者に与えられるのはバンタム級史上初、4団体統一王者の称号。戦前の予想はこの時もまた井上尚弥圧倒的有利。しかし本人はいつも以上に慎重だった。ファンが求めるパフォーマンスは、今いるバンタム級では限界が近づいていると感じていた。試合1カ月前、ここから地獄の日々が始まる。20代最後、これがバンタム級で9度目となる減量。余裕をアピールして見せたバトラー、一方の井上はギリギリまで減量を続けていた。前日計量で緊張が走る、人生初のオーバーだった。これが最後のバンタム級。井上は序盤から猛攻を仕掛ける。しかし、ガードを固めるバトラーを崩せない。判定まで2ラウンド。11ラウンド、モンスターは舞い降りる。自らの限界に直面しながらも倒しきった。試合からわずか1カ月、統一した4本のベルトを返上。