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井上尚弥がルイス・ネリ戦で勝利するまでの750日間に密着。この日は父の指導のもとでミットなどトレーニング。6月にはノニト・ドネアとの再戦を予定。2人は19年にも対戦。判定で勝利したものの井上は怪我に苦しめられた。ボクシングを始めたのは幼い頃。父の影響で始めたというが、同級生に比べて圧倒的な能力だったという。高校では史上初のアマチュア7冠に。井上のいるバンタム級は53.52kgが制限。ドネアとの対戦前には減量。試合前には最後のミット打ち練習。結果は2RでのTKO勝利。
2022年、アメリカの雑誌が「もしすべてのボクサーが同じ階級なら最強は誰か」というランキングを発表。日本人として初めて1位に選ばれたのが井上。その頃の井上が目指していたのは世界戦での勝利。周囲に好敵手がいないことが課題とされるなか、マニー・パッキャオを育て上げた名門ジムで練習試合などアメリカ合宿。当時のチャンピオンであるホバニシャンとの試合を終え、フィジカルの弱さという課題が露呈。
ドネアを破り、世界のボクシング4団体のうち3本のベルトをそろえたモンスターの次なる戦いは、バンタム級WBO王者・ポールバトラー。勝者に与えられるのはバンタム級史上初、4団体統一王者の称号。戦前の予想はこの時もまた井上尚弥圧倒的有利。しかし本人はいつも以上に慎重だった。ファンが求めるパフォーマンスは、今いるバンタム級では限界が近づいていると感じていた。試合1カ月前、ここから地獄の日々が始まる。20代最後、これがバンタム級で9度目となる減量。余裕をアピールして見せたバトラー、一方の井上はギリギリまで減量を続けていた。前日計量で緊張が走る、人生初のオーバーだった。これが最後のバンタム級。井上は序盤から猛攻を仕掛ける。しかし、ガードを固めるバトラーを崩せない。判定まで2ラウンド。11ラウンド、モンスターは舞い降りる。自らの限界に直面しながらも倒しきった。試合からわずか1カ月、統一した4本のベルトを返上。
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- ポール・バトラー
モンスターが去り、全ての王座が空位となったバンタム級は、次世代の強豪が火花を散らす激戦地へと変貌する。その階級で己の居場所をかけ戦うボクサーがいる。井上拓真は一歩先行く兄の姿をずっと見続けてきた。井上家にとってのかわいい弟。スピードや1発の重さは兄より上と言われながら、期待に応えられない自分がいた。兄が時代を築いたバンタム級で今こそ輝くために。必要だった覚醒の時、きっかけは兄だった。この時、兄弟でのスパーリングは10年ぶり。実は長い間、父・真吾から禁止されていた。兄から弟へ心を込めて繋いだ2人だけの時間。弟もリボリオ・ソリスとの試合に勝利。
未知の階級でいきなり出会ってしまった最大の壁。スーパーバンタム級でデビューし、10年間負けなし、階級の顔ともいえる絶対王者・フルトン。一方、約7キロ下のライトフライ級でキャリアをスタートさせた井上尚弥。半年前の米国合宿では、この階級の圧力を肌で感じていた。果たしてモンスターはスーパーバンタム級で通用するのか。階級の壁を越えるために、しかしそこには予期せぬ落とし穴が潜んでいた。これまでにないハードな打ち込み。だが、あまりにも強いパンチは時に己の拳にも深いダメージを与える。拳を負傷した状態でのスパーリング。その表情は険しかった。ケガから2カ月、スパーリングを再開。仮想フルトンへ、その鍵を握る男がやって来ていた。米国から呼び寄せたスパーリングパートナーは、フルトンと身長やリーチはほぼ同じ。1つ上のフェザー級で世界チャンピオンを目指す若き逸材。1週間26ラウンドに上るスパーリングの中で、井上はあるパンチを完成させつつあった。井上が対フルトン用に編み出したパンチが、ボディーへのジャブ。この試合、フルトンへ放ったボディーへのジャブは45発。8ラウンド、ボディーへのジャブでガードが下がった瞬間。
6歳で始めたボクシング。井上が有していたのは天性の才能だけではない。父を信じ、ひたすらジャブを打ち続けた。その姿に惚れ込んだ人がいる。ボクシング冬の時代に世界チャンピオンだった大橋にとって、それは鮮烈な光だった。当時18歳で世界チャンピオンを相手にスパーリング。2012年にプロデビュー、3戦連続KOと波に乗る怪物に、ボクシング人生の大きな転機が訪れる。ボクシング人生で唯一ダウンを奪えなかった存在、この男が井上尚弥を真のモンスターに変えた。井上のプロ4戦目の相手・田口良一。いじめられっ子からボクサーへ、プロ18試合目で日本ランク1位にはい上がった苦労人。実は井上がプロになる前、最初の出会いはあった。きっかけは高校を卒業したばかりの井上から、田口の元へ届いたスパーリングの依頼。田口はリングで対峙した瞬間の戦慄を忘れない。スパーリングにもかかわらずダウンを奪われ中断、叩きのめされた。この悔しさを糧に1年後、田口は日本チャンピオンに。すると初防衛の相手に井上を指名する。運命の試合、田口には秘策があった。両者ダウンのないままラウンドは進む。井上尚弥のプロ人生で唯一、一度もダウンを奪えなかった試合。こうしてモンスターは舞い降りた。田口はこの後、ライトフライ級の世界チャンピオンになると、2019年リングを去るまで7度防衛を重ねた。モンスターを相手に最後まで立ち続けた男は今、トレーナーとしての新しい人生を歩む。
モンスターがモンスターであるために。東京ドームでのビッグマッチ。相手はスーパーバンタム級1位・ルイスネリ。日本で悪童と呼ばれる男は6年前、体重超過で試合に臨み、山中慎介を引退に追い込んだ。東京ドームで日本人にとって因縁あるネリとの試合。いやが応でも周囲の期待は高まる。密着を始めた日と同じように、ジムに神聖な時間が訪れる。シューズにひもを通すと、じっくりと時間をかけてバンテージを巻く、次のリングだけを見つめて。5月6日東京ドーム、大歓声が舞う中で。勝てば英雄、負ければ奈落。ボクシングという過酷な生存競争。王者にして常に崖っぷち、だからこそ見えた。無敗の王者としての毎日は続く。
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