大西洋に浮かぶのはポルトガルのアゾレス諸島。9つある島は全て火山島で、2300メートル級の山も聳える。2004年に世界文化遺産となり、建物にも溶岩が使われている。ノルベルト・セルパさんは漁師の家系に生まれ、大航海時代から伝わる鍋料理・カルデラーダを受け継いでいる。祖父に憧れて髪を伸ばしているフランシスコは海に潜り、ブダイを捕らえてみせた。
祖父は6人兄弟。家族揃ってカルデラーダを食べてきたそうで、海の恵みを野菜と交換。懇意にしている農家がおり、具材を購入したことはないという。カンパチやブダイを豪快にぶつ切りにし、オリーブ油をたっぷり使って塩のみで味付けする。大鍋で1時間半ほど煮込めば、友人たちと食卓を囲む。
夕食が終わると、ノルベルト・セルパさんは孫と一緒にブドウ畑へやってきた。溶岩を一つ一つ積み上げた景色も世界遺産の一部。若くして漁師を辞め、ファイアル島の大学で研究を続けてきたが、フクリンアミジという外来種が急速に広がった故郷の海を危惧している。
5年前にヨットを買って世界一周の旅に出たセルパさん。パナマやインドネシアなどを巡り、行く先々で子どもたちに海の資源について説いたという。今回はタイへと向かい、次に孫と会うのは9か月も先。出発前日、フランシスコは自らの手料理で祖父の旅立ちを祝った。こうしてカルデラーダは次世代に受け継がれていく。