米国・トランプ大統領は、自身の就任前に成立した政策を次々に覆そうとしている。1月にニューヨークで始まったばかりの「渋滞税」ですが、取材すると大きな落とし穴が見えてきた。ニューヨークのマンハッタン。タイムズスクエア前の道路はかなりの交通量。中心部には1日に70万台もの車が流入し、慢性的に発生する渋滞は世界最悪レベルとされる。ドライバーは1人あたり1年間に100時間以上を無駄にし、日本円で30万円近い経済的損失を被っているという試算も。この問題を解決するために1月に導入されたのが全米初の「渋滞税」。マンハッタン中心部に入る乗用車から9ドル徴収。導入前後の様子を比べてみると、変化はあまり見受けられない。しかしニューヨーク州都市交通局は13日、渋滞税が導入されたことで1週間の交通量が7.5%減少し、マンハッタン中心部に乗り入れた車両は27万3000台減ったと発表した。マンハッタンに向けてお酒などを卸している会社では、渋滞税の導入に合わせ配送料の値上げを決めた。大型トラックに課せられる渋滞税は1回の通行あたり3000円以上と乗用車よりも高額で、マンハッタンへの輸送料値上げを検討する会社が相次いでいる。酒類の卸会社「Oak Beverages」マーレン・ブラチョCSOは「渋滞税はとても大きなインパクトです。コロナよりも悪いものだと思う」と話した。輸送コストが上がれば飲食店やスーパーも値上げを検討せざるを得ない。マンハッタンにあるレストランのフリオ・ぺ二ャオーナーは「値上げしなくてはならない。」と話す。副作用を伴ってでも渋滞税を導入したニューヨーク市は、地下鉄への人の流れの誘導を狙っている。しかしその地下鉄には大きな問題が。開通から120年が経つ地下鉄では、設備などの老朽化による遅延や故障が常態化。一部の路線では100年以上前の信号システムが今なお使われている他、エレベーターやエスカレーターのある駅は全体の3割程度にとどまり、インフラの近代化が長年にわたる課題となっている。市は徴収した渋滞税を地下鉄の改修などに充てる計画だが、問題となっているのは治安の悪化。大みそかには駅のホームで男性が見知らぬ男に突き落とされる事件が発生し男性は重傷を負った。12月には地下鉄の車内で女性が火を付けられ死亡するなど、凶悪な事件が相次いでいる。去年は前年の2倍となる10件もの殺人事件が地下鉄で起きていて、ニューヨーク州は今後6カ月間全ての地下鉄車両に警察官を配置することを決め対策を急いでいるが、市民の不安は拭われていない。渋滞税にトランプ大統領は「都市の競争力を低下させる」として、選挙中から反対の姿勢で「大統領に戻った最初の1週間で渋滞税を廃止する」と投稿。