世界最高峰のNBAを目指し、この秋米国に渡った23歳の河村勇輝選手。身長は1m73cmとNBAで最も小柄だが、そのプレーと人柄で本場のファンの心をがっちりつかんでいる。日本で4人目のNBAプレーヤーとなった河村選手。グリズリーズでここまで13試合に出場している。試合終盤、河村選手の出場を求める歓声は、本拠地メンフィスの恒例になっている。グリズリーズのグッズショップには、すでにユニホームが並んでいる。NBAと下部リーグの両方でプレーするツーウエー契約の選手としては唯一。グリズリーズを取材する地元のダマイケルコール記者も「ツーウエー選手でこのレベルは見たことがない。今までとは明らかに違う」と述べ、その人気ぶりに驚いている。河村選手が世界の舞台でその名を知られるようになったのは、この夏のパリ五輪だった。持ち味のスピードに、スリーポイントシュート。NBAのスタープレーヤーも多く出場する中で、平均20.3得点、7.7アシストをマーク。ともに全体3位にランクインし、並みいるトップ選手たちの中で存在感を示した。河村選手が次のステージに選んだのが、最高峰の舞台・NBA。平均身長約2mの世界。この挑戦は修行と、通訳もつけず、単身海を渡った。それでも勉強中の英語で、チームメートと積極的にコミュニケーションを取っている。河村選手は「ものおじする時間もない。夢、目標にむって恥ずかしがっている時間もない」と語った。グリズリーズのエース・ジャモラント選手は「君たちが予想以上に彼はしゃべっている。大丈夫だよ」などコメント。チームメートとの信頼を築いた河村選手は、プレシーズンマッチでは、プレーで周りを認めさせていった。日本選手として初めて米国でのプレー経験がないまま、NBAの扉を開いた。それでも、いざシーズンが開幕すると、NBAの舞台では、思うような成績は残せていない。出場できるのは試合終盤の僅かな時間のみ。スタートからコートに立つのが当たり前だったBリーグでは、昨シーズン40%を超えていたシュート成功率が、今は30%を下回っている。河村選手は「1時間以上ベンチに座っているなかで、急にパッと出て結果を残して来いというのは、簡単ではない。すべてのスキルにおいてレベルアップさせないといけない」と語った。驚くべきスピードで夢の舞台を突き進む中で、高い壁に阻まれて苦しむことも修行の一つと前を向いている。河村選手は「すべて吸収しながら、克服すべき課題に目を向けて、日々成長できればいい」と語った。インタビューの中では「この身長でもNBAで活躍することができれば、子どもたちの夢や目標になれる。それが僕の使命だ」とも語っていた。