EU(ヨーロッパ連合)の重要な政策を議論するヨーロッパ議会の選挙の投票がきょうから始まった。今回、議席を伸ばすと予想されているのが、EUに懐疑的な右派や極右の政党。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、物価の高騰などが続く中、「自国の利益を最優先にすべきだ」と訴えて、支持を広げていると見られている。その実情を取材。EUとたびたび対立してきた加盟国ハンガリー。今月1日、選挙集会で演説したハンガリー・オルバン首相は、「ウクライナのためにハンガリーの人の血を流したいのか?」と述べウクライナ支援を続けるEUを批判。オルバン首相は、与党に権力を集中させ、メディアへの統制を強めてきたとして、強権的だとの批判も受けてきた。中東などから大勢の難民や移民が押し寄せた際には、受け入れを強硬に反対。「最優先すべきは自国民の利益で、それを認めないEUの方針を変えなければならない」と訴えてきた。自国第一主義的な考えで共通していると、米国のトランプとの親密な関係もアピールしてきた。今回のヨーロッパ議会選挙。ハンガリー・オルバン首相が率いる与党のスローガンは「戦争か平和か」。ウクライナ支援の是非を争点に掲げている。オルバン首相は去年、EU(ヨーロッパ連合)が進める日本円で8兆円規模のウクライナへの資金支援に最後まで反対した。またエネルギーなど、経済分野で結びつきが強いロシア・プーチン大統領とも会談。良好な関係を維持し続けている。一方、EUは「ロシアの侵攻は、世界の平和と安定を脅かしている」として、ウクライナ支援は続けるべきだとする立場。ヨーロッパ議会も「ハンガリーがEUの戦略的利益を完全に軽視し、誠実な協力の原則に違反している」とする非難決議を採択。これに対しオルバン首相は「EUの姿勢は戦争を拡大させかねない」と主張し、今回の選挙で、与党の議席をヨーロッパ議会で増やし対抗しようと訴えている。ハンガリー・ブダペストには与党を宣伝する車が用意された。野党の候補者などが「ハンガリーを戦争に巻き込もうとしている」とアピールしている。選挙集会では、戦争反対を訴える演劇も上演。ハンガリー・オルバン首相の政策顧問・オルバンバラジュ氏は「制裁でロシアのウクライナに対する戦争を止められるはずだったが、そうはならなかった。制裁はヨーロッパ経済を破壊し、ロシアは勢力を強め戦い続けている。ヨーロッパのリベラルな指導者たちと対立を引き起こしているが、我々はハンガリーの国益を追求しなければならない」と述べた。こうした主張は、市民の支持を集めている。ハンガリーの選挙に詳しい専門家は「ハンガリー・オルバン首相がメディア統制を強めることで、与党への支持を集めてきた」と指摘。政策研究機関「ポリティカルキャピタル」・ラスロロベルト研究員は「政府が公共メディアを独占し、野党の政治家の報道はほとんどない。政府はインフルエンサー集団を作り、毎日政府のプロパガンダを流している。自分たちは平和を目指しているが、ほかは戦争支持だ”というのが政府の立場。事実とは異なるが、人々の共感を得ている」と語った。さらにオルバン首相は「EU(ヨーロッパ連合)によるロシアへの制裁のせいで、経済も悪化している」と主張。ハンガリー・ブダペストにある市場の店では、インフレの影響でソーセージの価格が約3割値上がりしたという。インフレ率が一時、EUの中で最も高かったハンガリー。オルバン首相は「EUがウクライナを支援するかぎり、侵攻が長期化し、物価高は続く」と訴えている。ベルギー・オルバン首相は、ヨーロッパ議会で与党の議席を増やすとともに、EU(ヨーロッパ連合)に懐疑的な右派や極右の政党とも連携することで、発言力を強めるねらいがあると見られる。オルバン首相は「今年の初めにはまだ少数派だったが、年末には西側で多数派になれるだろう」と述べた。ヨーロッパ議会選挙は国ごとに9日まで実施され即日開票される。