ローマ教皇が発表した回勅。本来はカトリック教会の司教に宛てる書簡だが、ここ数十年は教皇からの世界へのメッセージとして受け止められるようになっている。注目は2点。1つはAIの急速な進化は“バベルの塔を建設している”と警告している点。バベルの塔は旧約聖書に出てくる伝説の塔で、物語では天に届く塔を建てて自分たちの名を高めようとした人間の傲慢さや度を超えた野心を戒めている。教皇はAIが一部の巨大企業に権力を集中させている他、個人の創造性や判断力を弱めることにつながったり、自立型兵器の利用を招くといった非人道的行為を押し進めたりするバベルの塔だと批判し、“あなたたちはどのような社会を望むのか”と呼びかけている。もう1点は回勅を署名した日が5月15日であること。今年の5月15日は1878年から1903年まで在位したレオ13世が回勅署名した日から135年というタイミングだった。レオ13世は産業革命時代に回勅で労働者の権利を擁護し、搾取と過度な資本主義に警鐘を鳴らした。レオ14世は去年の5月の就任直後に行った枢機卿に向けた演説の際、「レオ」という名前を選んだ理由として“13世と同じ道を歩み続けるよう召されていると感じた”と話していた。つまり現在のAI技術の広がりを産業革命と並ぶ文明史的な転換点と位置づけ、13世と同じように社会に警告しているのではないか。
