広島県の老舗酒蔵「今田酒造本店」の今田美穂社長は、中国・四川省成都市を訪れた。1年をかけて、中華料理に合う日本酒づくりに取り組み、現地の反応を確かめに来た。四川省は、広島県と友好提携を結んでいて、成都は、人口1000万人を超える巨大都市だ。中国向けに醸造した純米酒「と」は、辛さが特徴の中華料理に合うように、酸味にこだわり、上海総領事館に勤める酒の専門家らと試行錯誤の末に、開発にこぎつけた。今田社長らは、広島産の日本酒の商談会に参加した。商談会には、地元・四川省の飲食店や取引業者46社が出席した。日本酒「と」を試飲した人たちからは、酸味が食欲をそそり、四川料理との相性もいいなどといった好意的な反応や、四川では、日本酒は一般的ではなく、ビジネスの接待には向いていないなどといった否定的な反応もあった。翌日、人気の麻婆豆腐店を訪れ、今田社長らは、本場の四川料理の辛さを味わった。地元の人も、甘い飲み物で辛味を抑えていたが、今田社長は、箸休め的に酸味のあるものが食べたくなるから、酸のあるものが合うのではないかなどと話した。夜、成都市内の飲食店で、晩餐会を開き、中華料理と日本酒との相性を確認した。冒頭、今田酒造が手掛けた日本酒を紹介した。今田社長は、日本酒の提供するタイミングと温度を調整していた。「と」の評判は良く、四川省では、口の中がヒリヒリしたら、酢をつけて食べることがあり、酸味を特徴にした酒を四川料理と合わせる考え方がすごいなどと言う人もいた。さらなる改良を加えた中国向けの酒の仕込みは、今季もまもなく始まる。