レトロな機械音に手動で開ける蛇腹の扉。去年製造から100年を迎えた日本最古の現役エレベーター。活躍の場は京都市の中心部、四条大橋すぐの中華料理店。店は大正時代に造られ建物を前身である中華料理店からエレベーターとともに引き継ぎ、戦後間もない1945年にオープンした。以来この店を訪れるお客さんをテーブルまで送り届けてきた。1924年にアメリカで製造されたこのエレベーターは現在のものとは異なり、運転士が必要な手動式。操作はハンドル1つ。シンプルだからこそスムーズな運転には技術が必要。ハンドル操作を誤ると中途半端な位置で停止してしまう。この店の店長は于修忠さん。エレベーターは店の創始者である于さんの祖父から建物とともに大切に受け継がれてきた。いまでこそ店の象徴となっているこのエレベーターだが、于さんが働き始めた90年代はその存在は広く知られておらず、安全面やコストにおける維持管理の大変さから撤去の話も出ていたという。それでもこん日までこのエレベーターを残してきたのは、伝統を大切にする京都で営業をしてきたことも理由の1つだという。古いものだからこそ月2回のメンテナンスが欠かせない。エレベーターの見た目や装飾は大正時代からほとんど変わっていないが、安全を確保するためワイヤーやモーターは新しいものに交換されている。この日、店には古くからの常連さんが多く訪れていた。50年以上通っている人も多いという。100年にわたり大切に使われてきたエレベーター。時代を超えて動き続けるその姿は、次の100年へと私たちを運んでいく。なお、この店では建物やエレベーターの見学のみは受け付けていない。