アメリカと中国は今月12日、スイスで行われた貿易協議で合意し、米中双方の100%を超える関税のかけあいという異常事態はひとまず回避された。引き下げた関税の一部は撤廃ではなく90日間の停止となっていて、今後両国の間でアメリカの貿易赤字や中国の市場開放について協議が進められる見通し。今回の合意の背景には現代の産業に欠かせないとされるレアアースをめぐる駆け引きがあったと指摘されている。先月4日、中国商務省は17種類あるレアアースのうち7種類について外国への輸出を許可制にするとした上で、十数社のアメリカの企業を指定して輸出を原則禁止すると発表。レアアースの世界市場は採掘7割、精錬後の流通9割を中国が独占している。アメリカのホワイトハウスの高官がレアアースの輸出規制について「懸念している」と述べ、中国側は大きな効き目があったと思っている。12日に米中の合意文書が交わされ、14日に中国政府がアメリカ企業への輸出規制を90日間停止すると発表。中国がレアアースをアメリカとの貿易協議の材料にしていることが分かる。ただ、輸出の許可制が停止されたという発表はない。習近平指導部は1期目のトランプ政権に高い関税をかけられて厳しい貿易交渉を迫られた経験から、2期目のトランプ政権が中国に関税を仕掛けてくることを予想して対策を準備してきた。2010年、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の船に衝突し船長が逮捕された事件では、反発した中国が日本に対してレアアースの輸出規制を行い、レアアース・ショックと言われ、日本をはじめ世界に波紋が広がった。アメリカは自前での生産に向けて投資や技術開発に力を入れている。3月にはトランプ大統領が重要鉱物の国内生産を拡大するための大統領令に署名。トランプ政権のグリーンランドを領有したとの発言の背景にもレアアースがあるとみられている。レアアースは岩石に少しずつ混在していて精錬が難しい。精錬の過程で環境を汚染しやすい。中国での環境汚染はまったく分かっていない。最近はアメリカ、カナダ、ブラジル、オーストラリアなどの企業が 投資や技術開発をしていて、日本の企業も投資に参加している。
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