ワシントンから中継。今回の米中の関税交渉はアメリカ側が折れた形にも見えるが、特に中国から多くの商品を輸入する小売業界からは歓迎する声が出ている。今回の合意により瀬戸際から引き返すことができたという安堵の声がメディアで報じられている。予想を大きく下回る水準まで関税を下げた背景には経済が悪化する前に手を打ちたいとの焦りがあり、政権としていかに追い込まれているかが窺える。一方で中国も表向きは強硬な姿勢を貫いてきたが、経済が冷え込む中でアメリカとの貿易摩擦が長期化すると景気悪化のリスクが避けられなくなるという事情もあった。米中互いに経済への悪影響を考慮したといえる。今回の合意で見えてくるのは、アメリカ経済が悪化する前に関税交渉を早く決着させたいという切実な事情があり、相手国から大きな譲歩を勝ち取れなくても相互関税の上乗せ分については必ずしもこだわっていないのではないかと思われる。ただし、相互関税のベースとなる10%の関税は維持されているため、トランプ関税の全面的な撤廃を求める日本にとっては直ちに朗報とは言えない。むしろ米中の対立が続いていた方がアメリカがより経済的に追い込まれる状況になり、米中が歩み寄ったことは日本や他国からすると交渉を有利に運ぶ材料がなくなったとも言える。トランプ政権の関税を巡る対応は場当たり的に進み、今後の交渉の行方は特に日本からするとますます分からなくなってきたのではないか。