物価の優等生として食卓を支えてきた豆腐だが、原材料費や燃料代などコストの上昇で、豆腐メーカーは苦境に立たされている。倒産や廃業の件数は、最新のデータがある去年1月〜7月までは過去最多のペースで増えており、年間でも最多を更新する可能性があるとみられている。そうした状況の中で、新商品を開発してそれに見合った価格を設定しようとするメーカーを取材した。都内のスーパーでは、店頭価格100円前後の豆腐が売れ筋。こうした中、今月、豆腐メーカーが価格を192円に設定した商品を発表した。特徴は「大豆の風味」をより感じられるようにしたこと。豆腐の生産工程で工夫をしたのは豆乳。一般的には冷たい状態でパックに充填するが、ここでは温かい豆乳を使っている。その分、手間はかかるが、大豆の風味が増すとしている。使用する大豆も国産のものにこだわり、大豆の産地と品種を表示することで消費者にアピールしたい考え。メーカーでは、原料や製法などを見直すことで、今こそ豆腐に付加価値を生み出していきたいと考えている。メーカーの担当者はスーパーを回って営業を強化、パッケージにある仕掛けを紹介した。QRコードを読み取ると、豆腐を作った人や大豆の産地が表示される。塩をふると甘さを感じるなど、お勧めの食べ方も紹介されている。メーカーは豆腐の食文化を守り続けるためにも、新たな価値をつけることが重要になってくると考えている。豆腐メーカー・池田未央社長は「豆腐を価格で買う商品から、価値で買う商品に変えたい」と述べた。このような付加価値で差別化を図ろうという動きは、ほかのメーカーの間でも出てきている。物価高でも消費者に選ばれる工夫が求められている。