福岡市に住む福田コウさんは100歳。今も福岡・中央区に残る戦跡の1つ、西部軍総司令部跡地を訪ねた。博多区出身の福田さんは戦時中総司令部で敵機の飛行状況の暗号通信を各地から受けるなどの業務についていた。終戦の年の8月、福田さんは1本の電話を受けた。建物の外に捕虜がいるので見に行って欲しいと連絡を受けた。捕虜たちは墜落したB29の乗組員でその後、裁判を経ず違法に処刑された。福田さんはそれを知り毎年同じ時期になると苦しくて眠れない日々が続いた。捕虜たちを追悼したいと願い続けてきた福田さんがようやく祈りを捧げる場所を見つけたのは2年前だった。油山にある寺に処刑された捕虜を祀る地蔵があると知ったのだ。地蔵に手を合わせると少しだけ気持ちが和らぐという。福田さんの苦しい胸の内を知った航空機の歴史研究家・深尾裕之さんが捕虜の家族とオンラインで対面する機会を作ってくれた。深尾さんが紹介したのは油山で処刑されたとみられる米兵の1人、チャールズアップルビーさんの娘と孫。アップルビーさんは終戦の年に捕虜になった。アップルビーさんの娘・パトリシアさんは「あなたが若い時にそれほど苦しい経験をしなければならなかったことを気の毒に思う」と話した。福田さんは「今回で胸がスッキリした。あの戦争がなかったらみんな平穏に楽しく暮らせていたんじゃないかと思う」と話した。