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- 長谷川博己
オープニング映像が流れた。
フランス・パリの一等地に立つオペラ座。その目の前に「ユニクロ パリ オペラ店」はあった。世界戦略を見据え16年も前にオープンし、今や多くがリピーターである。ユニクロCのパーカーは日本で買うと4000円ほどだがパリでは5割以上高くなっている。今や世界26の国と地域で2541店舗を展開するユニクロ。運営するファーストリテイリングは売上高3兆円を突破した。さらに柳井会長は大いなる野望をぶち上げた。アパレル業界は日本国内だけでも年間15億着の衣類が売れ残り廃棄しているという現実がある。環境汚染産業と呼ばれることへの汚名返上である。EUでは来年からは売れ残り衣類の廃棄が禁止となる。仙台倉庫ではユニクロ各店で回収された使用済みの服が集められていた。日本国内でも年間約1000万着の服が運び込まれてくる。アパレル業界全体が抱える深刻な環境問題をビジネスへとシフトする大転換をはかるユニクロ、その挑戦を追った。
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長谷川博己が2000年からの20年間で世界の衣料品生産量は2倍増えたと話した。生産量が増えると同じように増えるものがあり、それは廃棄される量であるなどとも話していった。
40年前広島から始まったユニクロの歴史。90年代後半から社会現象になったフリースブームは日本中を席巻した。以降、大量生産・大量消費の象徴的存在となっていった。そして今店内を見渡すと、2001年から開始した使用済みの衣類の回収ボックスが置かれていた。全国の拠点に集められる回収古着は1つ1つ人の手でチェックされ、サイズ・種類ごとに丁寧に仕分けされていく。これらは難民支援など81の国や地域へ寄贈され、ユニクロの古着は1枚も無駄にすることなく様々な形で再利用されている。こうしたサステナブル事業を統括するのが創業者の次男である柳井康治取締役である。廃棄衣類の根本的解決にはビジネスの力が欠かせないという。回収した古着を活かす新たなビジネスである「古着プロジェクト」が立ち上がり、目標は2024年9月の全国展開となっている。その古着ビジネスの立ち上げを託されたのはユニクロ入社3年目の大高陽子さん。販売に回す古着の選定を行い、商品部とスマホで確認しながら売値の検討を行っている。大高さんに課せられたのは古着で利益を出すことだった。洗濯代や輸送コストもかかるため、安くしすぎると赤字になってしまう。
この日、大高さんが向かったのは石川県にある小松マテーレ。80年以上続く老舗の染色工場である。回収された古着に付加価値をつけるため、厳選した服をここに送っていた。白のボーダーなど色やデザインもバラバラな古着だが一緒に染色用の圧力釜の中へ入れていく。高温高圧で一気に染め上げることができ、染め方は独特の風合いやビンテージ感を出す工場オリジナルとなっている。わずか3時間で綺麗に染め上がった。1度に大量に染めることでコストも削減できる。次にやってきたのは人気の古着屋さん。大高さんは店舗作りを任されるのも初めてでイメージを膨らませていっていた。今回、古着販売の実験店舗になるのは東京の環状八号線沿いにある世田谷千歳台店となる。ここは古着の回収率が高いということで選ばれた。去年の3月にテスト販売のスタートを翌日に控え、閉店後の店内で古着コーナーの設置が始まった。値段は2000円からでデニムも古着なら2000円となっていた。ブルーを始め、4色の違う色で染めた古着が並んでいた。ユニクロの陳列は商品をいちいち手に取らなくてもわかるのが特徴となっている。圧倒的な量とバリエーションでユニクロらしさが作られていた。しかし今回大高さんがこだわったのは、サイズやデザインをバラバラに並べ宝探しを楽しんでもらうことである。
3月29日、9月の全国展開に向けテスト販売がいよいよ始まる。滑り出しは上場となっていた。
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福岡市中央区の九州最大の繁華街の中にある「ユニクロ 天神店」。ここでもテスト販売が行われていた。東京の世田谷千歳台店とは客層が違っており、大高さんは視察に来ていた。古着は男女区別なく販売しているが、縮んでしまうという古着ならではの問題が生じていた。
長谷川博己が相反することを行えば混乱が起こるのは当然のことなどと話していった。
先が見通せない中、古着のビジネス化に乗り出したユニクロ。テスト販売から3週間後、本部で行われた売り上げ報告会では最高幹部が参加した。サステナブル事業全体を統括する柳井正会長の次男である柳井康治取締役である。そしてユニクロの最高執行責任者・清智彦さんもいた。いかにこの事業に力を入れているかわかる顔ぶれである。当初、1週間で300から400着売りたいと言っていた大高さんの目論見ははずれていた。あえてバラバラに並べ宝探しを楽しんでもらう陳列について、柳井康治取締役からは指摘が入っていた。またサイズ管理や個体管理ができていないことについても話していった。もともと大手ITコンサルタント会社に勤めていた大高さんは3年前ユニクロに転職。コンサル時代に培った戦略を立て実行する能力を活かそうと新規事業に手を挙げていた。
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まずはサイズの問題であり、ユニクロが製品の縫製や検品を委託している会社へやって来た。元のサイズから変わってしまう古着のため、1点1点測り直さなければならない。大高さんは測るカ所を身幅だけに絞っていた。大規模展開するには効率化が必須条件となるため、服を紙の上に置きどの色まで幅があるかで大きさを分けることにした。そして世田谷千歳台店では閑古鳥が鳴く古着コーナーの立て直しに大高さんが乗り出した。細かいアップデートを繰り返すが、なかなか客足にはつながらなかった。
今や世界的ブランドに成長したユニクロ。運営するファーストリテイリングは売上高3兆円を突破。世界の巨人「ZARA」や「H&M」を猛追している。頂点に立つためには使用済みの衣類をビジネスに転換することが迫られていた。その決め手が「古着プロジェクト」である。5月下旬、「ユニクロ 有明本部」では古着プロジェクトを任された大高さんはこの日重要な会議を迎えていた。予定されているトライアル期間は8月末までであり、9月の全国展開まで残り3カ月となっていた。出席したのはユニクロのビジネスとサステナブルの舵取りをする最高幹部である。営業部からは核心をついた意見が出て全国展開は白紙となり、一旦仕切り直しとなり古着プロジェクトのメンバーと1から計画の見直しを迫られることとなった。注目したのは売場スタッフから集めた顧客の印象で「古着に抵抗がある」「清潔感などは伝えきれていない」という元々古着にネガティブな印象を持つ人が多いことがわかった。
そこで向かったのが東京の東雲にあるユニクロの自社工場である。商品製造や技術開発を担う重要拠点の1つとなっている。早速スタッフに相談すると、ユニクロの古着をできる限り新品に近づけたいという無理難題が出てきた。ニット製品のスペシャリスト・宮本直映さんは今回、古着の洗濯を引き受けてくれた。ダメージを受けて弱くなっている繊維を傷めないように、皮脂の汚れなどを浮かしていく。
1カ月後、洗浄テストを繰り返した完成品をチェックしていく。最先端の特殊な洗剤も試しており、着古され白く毛羽立ったズボンも特殊な洗剤で洗うことで元の色が復活していた。酵素の力で毛羽などを取り除き、新しい生地を表面に出すというものでその差は一目瞭然である。コストはかかってしまうが、大高さんは品質にこだわった。洗浄した古着は最後に新品同様のチェックを受け、糸のほつれや毛玉などベテランのスタッフが細部まで新品に近づけていく。古くて新しいユニクロ古着の完成である。
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群馬県の「ユニクロ 前橋南インター店」。周囲には人気の大型店が立ち並び、週末には家族連れで賑わっている。一度は白紙になった全国展開で仕切り直しの3店舗目に、この店が選ばれることとなり身幅で計測した大きさごとに分けて陳列していく。そして大高さんがアピールしたいことは「丁寧な洗濯」となっており、値段も見直すことにしていた。元値3000円の商品は1000円値下げし2000円に。コストがかさぶ中、利益は減るが多くの人の手に渡ることにより質を知ってもらうことを優先していた。新たな問題があり、元々小さい女性用のSサイズはさらに縮んだことで大人が着られないものが数多く売れ残っていた。
4月3日、やって来た家族連れが見ていたのは古着コーナーだった。子どものモデルを使った看板を設置し、小さい古着をアピールしていた。縮んで小さくなった古着を子どもにきてもらおうというのである。大高さんが進める古着事業は3店舗のトライアルで黒字化を達成。4月からは営業部の所属となり、ビジネス化に向けはずみをつけていた。しかしまだ予定していた全国展開は決まっていない。
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長谷川博己は利益の追求だけではビジネスが成立しなくなっているのは間違いないなどと話した。
「ガイアの夜明け」の次回予告をした。