- 出演者
- 長谷川博己
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舞台は、中古車販売の「ビッグモーター」。店の前には雑草が生い茂っていた。店の中から出てきた人たちが、雑草かどうか確認しなが必至で手入れしていく。2023年、除草剤を使って街路樹まで枯らし、警察が捜査に乗り出し逮捕者まで出ていた。当時の社長、兼重宏行氏は1代で日本一の中古車販売会社を作った人だったが、修理に来た車をゴルフボールなどで傷つけ、保険金の水増し請求をしていた。当時実権を握っていたのは、社長の息子の宏一副社長。その強引なやり方を知っている社員は、「理不尽が多すぎて、言うことがめちゃくちゃだった」と話した。不正発覚後、中古車の販売はピーク時から80%以上減少。赤字が続き、存続の危機に陥っていた。
ビッグモーター再建に名乗りを上げたのが「伊藤忠商事」。きょねん5月、ビッグモーターは伊藤忠のもとで名前を変え再生を始めた。新しい名前は「WECARS」。不祥事を引き起こした企業の実態、生まれ変わるための苦闘の日々を追った。
去年6月、ビッグモーターが買収されてから1か月。埼玉県熊谷市の店舗では、 社名が変わっても看板はまだ「ビッグモーター」のままだった。入口に立っていたのは、以前からこの店舗で店長をしている飯島司さん。そこに伊藤忠から送りこまれた、WECARSの社長・田中慎二郎さんがやって来た。田中さんは、全店舗の視察を始めていた。足を止めた場所にあったのは、販売実績ボード。かつてここには行き過ぎた成果主義の象徴があった。ビッグモーター時代、従業員の名前の隣には「販売戦力」や「買取戦力」が数値化されて張り出されていた。6000人いた社員は1/3が辞め、今は4000人ほど。
2024年7月、全国の店舗で看板の掛替工事が始まった。 業界を牽引してきた”名前”は外され、新たな社名に変えられていく。その頃、東京港区にある伊藤忠商事の東京本社では、WECARSの田中社長が呼び出しを受けていた。グループを束ねる岡藤正広会長に改めて発破をかけられた。東京千代田区のWECARS本社では、幹部が一同に集まる会議が行われていた。出席者は伊藤忠出身者ばかりで、ビッグモーターの旧経営陣はいない。新会社発足から2か月、全国の店舗を視察した結果をもとに今後の方針が話し合われる。
経営企画部長の合六渉さんは、今回の買収のキーマンとなる人。伊藤忠社内で稟議書を書き、ビッグモーター買収を推進した人物。合六さんは最終的に、兼重親子とも対面し決断を迫ったという。積極的に進めた理由を聞くと、「まず何も躊躇はなかった」と話し始め買収の計画に自信があったことを表した。7月下旬、合六さんはビッグモーター時代から現場を支えてきた店長などを集め、懇親会を開いた。会社の外で社員たちの本音を聞きたかったという。
創業者の息子である、兼重宏一副社長の取り巻きで「ロイヤルファミリー」と呼ばれ、権力を握っていた幹部や”ゴルフボールで車体に傷”を付けていた者、”街路樹伐採を指示”した者など、問題のあった社員は既に会社を去った。合六さんは、立案して指示を出した人と実行した人は分けて考えるべきだと話した。不正を起こさない組織を創り上げるため、合六さんが動き出した。真っ先に手を付けたのは不正の温床となった、板金・塗装部門。かつてそこには、事故車両1台当たり修理に14万円前後の厳しいノルマがあった。合六さんが始めたのが、整備士が作業前に写真を撮影、その後も作業を勧めるたびに細かく記録することを義務付けた。撮った写真は修理の記録と共に損害保険会社へ送付し、水増し請求などが出来ない体制を目指す。
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ビッグモーターは、金融庁に保険代理店の登録を取り消されてしまったため、現在のWECARSでも自動車保険の販売ができないという。収益だけでなく、客の利便性にも関わる問題だった。そこで導入したのが、伊藤忠商事の子会社である「ほけんの窓口」を併設し、お客に自動車保険を比較して選んでもらおうという。
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60代のAさんは、2022年に所有するアウディの修理をビッグモーターに依頼したが、営業マンから「廃車にするしかない」と説得され、1万円で下取りに出した。その後、18万円ほどで転売されていたことがわかったという。代わりに勧められた軽自動車を103万円で購入したAさんだが、後に水没車の疑いが浮上してきた。不当な契約だと感じ2023年に、対応した従業員とビッグモーターを相手に裁判を起こしたが、未だに解決していないとのこと。ビッグモーターは、伊藤忠などによる買収の際、事業を引き継ぐ「WECARS」と訴訟などに対応する「BALM」と二分割したという。「BALM」は取材に応じなかったが、被害者への弁済は勧める方針だとのこと。しかし、Aさんには連絡などない状況。
WECARSとして再建を進める合六さんに「ビッグモーター=ウィーカーズと思っている人にどう向き合って行くのか」質問してみたところ。本音では、中身の仕組みも一新されたので、もう一度試してほしいとは思うとのこと。そして、この日合六さんは「給与体系」について人事部門の人たちと話し合うことに。強すぎるインセンティブ制度にメスを入れようとしていた。
3月WECARSの本社にて、再建を進める合六さんが以前はなかったことを始めた。各店舗の整備や板金の人たちと、本社を繋いだリモート会議。ビッグモーターの時代にはなかった、現場のミスを報告してもらうための会議。
再建に向け最前線で指揮を取る合六さん。従業員からのある提案でビッグモーター時代の伝統「声出し」を復活させた。全てを否定するのではなく、お客のためになることは残していく。不祥事の発覚後、全盛期の2割以下に落ち込んだ中古車販売、今もまだ5割ほどにしか戻っていない。再建はまだ道半ば。
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「ガイアの夜明け」の次回予告が流れた。
「ワールドビジネスサテライト」の番組宣伝。「アメリカ”相互関税”で世界同時株安」など。