創業100年以上、高精度な切削加工を得意とする三重県の町工場「中村製作所」。“空気以外、何でも削ります”をモットーに、手がけたのは産業用ロボットから宇宙ロケットの部品まで。しかし、リーマンショックなどの影響で倒産寸前に追い込まれた時期があった。独自の技術力はあるものの、ビジネスにうまく転換できていないと課題を感じていた、4代目社長の山添卓也さん。そんな中、「削る」という技術をもっと身近に感じてほしいと、新たに自社ブランドを立ち上げた。それが、“誰でも簡単に料亭の味を出せる”という「魔法の鍋」。1000分の1mm単位まで対応できる高精度な切削加工で、密閉性を高める形状に。蓄熱効果を上げ、食材のうまみ成分、水分を凝縮。ご飯をおいしく炊けるほかに、土鍋に材料を入れて数十分間火にかけ止めると、あとは余熱だけで料理が完成する「蓄熱調理」が行えるように。“形状を整える”だけではなく、“機能性を高める”という切削加工技術の新たな可能性を追求し、去年から「オープンファクトリー」を展開。職人と来場者をつなぐ場としても活用し、観光ツアーや学生のインターン、商品の体験会などを積極的に開催している。職人の高齢化、赤字経営などで廃業する町工場が増える中、中村製作所の売り上げは右肩上がりに。異業種とのコラボレーションを次々と実現させ、新しいオリジナル商品の開発に力を入れている。職人の技術の底上げにもつながり、部品加工事業にも好循環が。中村製作所の職人「30人前後の会社だったのが、今は3倍くらいに。下から優秀な職人が育ってくると、自分もモタモタしていられない」。中村製作所4代目社長・山添卓也「飛行機の部品をやらないかという話がきたり、ディズニーランドのアトラクションの部品、想像できなかった世界もありますし、自社ブランドで得た頭の柔らかさ、柔軟に新しい事にチャレンジしていく」。