サラリーマンが行き交う街、東京・丸の内。東京駅を出てすぐ、赤いパラソルの中に今回のスターがいる。74歳の靴磨き職人・赤平健二さんはこの地で55年。磨いてきた靴の数、なんと20万足に上る。赤平の元には多い日に20人ほどが訪れ常連客も少なくない。赤平さんの人気の秘訣はこだわりの道具を駆使した技術にある。最初に靴墨をなじませるために使うのが、なんと、傘の布部分。赤平さんいわく、靴墨をなじませるための摩擦熱を起こすにはこの傘の硬く粗い目の布が最適だという。ほかにもきめ細かい薄手の布など数種類を使い分けていると言う。忙しいサラリーマン相手の靴磨きということもあり、1人につき10分から15分ほど、その早業も人気だ。高校卒業後、丸の内で靴磨きを始めた赤平さんは路上で靴磨きを行っていた両親を手伝い、継ぐ形で磨きの世界に入った。当時は高度経済成長期で駅前には靴磨き職人たちがあふれていた。しかし時代とともに需要も減り今、東京駅前で靴を磨くのは赤平さん1人しかいない。それでも赤平さんがこの仕事を続けるのには理由がある。この日、赤平さんの元には10年以上、出張のたびに靴磨きに来る常連が、駆け引きがない関係が靴磨きの仕事での魅力の1つ。靴磨きだから得ることができた大事な絆と風景。赤平さんはその記憶を絵で残している。描いてきた絵のテーマは東京駅と人。きょうも赤平さんは行き交うサラリーマンの靴を磨く。現在、23区内で許可証を持ってこの路上靴磨きをする人は5人ほどしかいないそうで新規の受け付けもしていないということで今後、路上の靴磨きは貴重な存在になりそうだ。