能登半島地震の被災前の航空写真を紹介。建物だが、地震後の写真を見ると水路側に大きくずれて移動しているのが分かる。「側方流動」と呼ばれる現象によって、住宅や道路の境界が分からなくなっている所が広範囲に及んでいる。今の法制度のままでは復旧工事もままならないと危機感が高まっている。液状化による被害が広範囲に及んだ石川・内灘町。自宅を構える夫妻は、地盤がずれる側方流動の被害を受けた。地盤が液状化し、側方流動が起きると土地の境界の位置と実際の位置がずれる。今の法制度では、地盤が動いても筆界と呼ばれる土地の境界は動かないという原則がある。道路や住宅の復旧を進めると、他者の敷地にまたがって工事をしてしまうといった問題につながりかねない。解決するには、当事者どうしが土地の境界を変更するのか、元のままにするか、話し合う必要がある。石川・内灘町とかほく市では、東京ドーム30個分の広さで液状化の被害が発生したと見られ、多くの場所で土地の境界が分からなくなっている。県道を所有する石川県は、対応に苦慮している。当初は境界の位置に合わせて、県道を元の場所に戻すことも考えたが、ずれ幅が大きい所もあり、難しいと感じ始めている。石川県都市計画課・高橋雅憲課長は「どれが答えか、いまのところまだもっていない状態」と語った。なかなか方針が示されない現状に、多くの住民が不安を募らせている。事態の深刻さを受けて、国も支援に動き始めたが、打開策は見いだせていない。10月から国土交通省が境界問題に詳しい専門家を派遣し、自治体と対応を協議しているが、「ずれの大きい箇所では、家や道路を元の位置に戻すのは、現実的ではない」との見方が出ている。現状に合わせて復旧工事をする場合、住民が話し合って境界の位置を変更する必要があり、大きな負担になる。そこで行政が主導して境界を引き直す、土地区画整理事業も検討されている。ただこの方法を取った場合でも、数年単位の時間や手間がかかる。なぜ今の法制度では境界の位置を現状に合わせて動かすことができないのか。石川・内灘町では、液状化で道路や宅地はさまざまな方向に動いた。ずれた幅も場所によって異なる。それに合わせて境界が動くと、土地の面積が目減りし、不利益を被る人がいるから。地震によって境界の位置が動くこともあるが、大規模な地殻変動によって広い範囲で土地が平行移動した場合だけ。法務省は、能登半島地震による「今回の現象は、境界が動く場合に当たらず、現時点では、特に対応を検討していない」としている。ただ今回のケースは前例のない事態。専門家は「新たな法律を制定するなど、柔軟な対応を検討すべき」と指摘。日本土地家屋調査士会連合会・石野芳治常任理事は「是正する必要があると強く感じている」と述べた。
NHK金沢・安藤健人記者がスタジオで解説「地震からまもなく1年となる中、被災者にとって重要なのがスピード感を持った復興。専門家や自治体の関係者に話を聞くと、現状のずれてしまった境界を基準に合意形成し、不利益を被る人については、個別に話し合うという方法を取るしかないのではないかという本音も聞かれる。不可抗力の自然災害で起きてしまったという事情を踏まえると、住民も納得しやすいのではないかという。液状化で地形が大きく変わるという事象は、今後別の地域でも起こる可能性がある。この問題に正面から向き合い、解決策を真剣に考えることが必要」。
NHK金沢・安藤健人記者がスタジオで解説「地震からまもなく1年となる中、被災者にとって重要なのがスピード感を持った復興。専門家や自治体の関係者に話を聞くと、現状のずれてしまった境界を基準に合意形成し、不利益を被る人については、個別に話し合うという方法を取るしかないのではないかという本音も聞かれる。不可抗力の自然災害で起きてしまったという事情を踏まえると、住民も納得しやすいのではないかという。液状化で地形が大きく変わるという事象は、今後別の地域でも起こる可能性がある。この問題に正面から向き合い、解決策を真剣に考えることが必要」。