去年10月、オリンピック代表選考に関わるワールドカップまで1か月となり、平野歩夢はオーストリアで合宿に入った。久しぶりの雪上トレーニングで最初に行ったのはパイプの確認。パイプごとに異なる壁の角度や表面の凹凸、風の強さをつかんでどう滑るかイメージする。1日5時間の練習で繰り返していたのは踏み切りと着地の基本動作。金メダルを獲得した北京五輪で見せた大技「トリプルコーク1440」(縦3回転・横4回転)の完成度を高めようとしていた。日本代表の村上コーチは「彼の強さは圧倒的な高さ。いちばん気にしている踏み切りのタイミングがあの高さを生んでいる」と語った。ワールドカップで優勝経験もあるチェイス・ジョージー選手の踏み切りと映像で比較しながら平野の踏み切りを紹介した。ギリギリで踏み切ることで滑走距離が長くなり、高く飛ぶことで、より回転することが可能となる。北京五輪では高さ・技の難度が評価されて高得点となった。