群馬県千代田町のデイサービスに製作途中の車いすが持ち込まれた。座り心地を追求した車いすを作っているのは介護施設を経営する関口慶輔。きっかけは9年前、ある高齢者との出会いだった。女性は当時80代、筋力が衰え、車いすで姿勢を保つのが難しい状態だった。正しい姿勢で座るとき体重は骨盤のいちばん下にある座骨にかかる。ところが筋肉の支えがないと骨盤が後ろに傾き、骨のとがった部分が強く圧迫される。その結果、女性はお尻に床ずれを発症した。移動の利便性が重視されてきた日本の介護用車いすは欧米に比べ、乗り心地の追求が遅れているといわれている。床ずれができない車いすを作るためまず見直したのが座面。欧米で主流のくぼみのある形を採用し骨盤の傾きを防いだ。ここに特殊な素材で作ったクッションを組み合わせると体重が分散され、お尻への負担を大幅に減らすことができる。ちなみにこのクッション、何でできているかというと、群馬特産のこんにゃく。近年、工業製品への活用も注目されていて、こんにゃく粉の配合やパッケージの形など100通りを超える試作を繰り返し、理想のやわらかさにたどりついた。もう1つ大切なのが、車いすを座る人の体に合わせる機能。機械部品の開発を得意とするメーカーの協力でフレームの構造を一から見直し背もたれの角度や座面の位置、さらには高さまで工具を一切使わず調整できる車いすを実現した。車いすに正しい姿勢で腰掛けることは床ずれの防止だけではなく内臓への負担を減らすことにもつながるという。関口は開発した車いすを介護保険を使えば月額1000円前後で利用できる価格に抑え、多くの高齢者に使ってもらえるようにしたいと話していた。