千葉市の中学校の吹奏学部に島村楽器の社員の姿が。この日は生徒の使用している楽器のメンテナスにやってきた。取引がある学校を定期的に訪ねて簡単な修理を行い手入れも行う。先輩から後輩に受け継がれる楽器を大切に扱ってほしいと、長年続けているという。島村楽器は昭和初期に江戸川区の平井の文具店が始まり。創業者の島村元紹が文具店内にヤマハ音楽教室のフランチャイズを開いたのを機に1969年に島村楽器を創業した。島村が大切にした精神は、物を売る前にコトを売り、コトを売る前に人を売る。ギターを購入してきた客の数だけギターに託す思いがあり、接客を通して思いを汲み取り、思いに叶うギターを提案。ただ物を売るのではなく、客の音楽ライフを支える信頼される人であれというメッセージだという。そんな商業者の精神を廣瀬は入社後に身を持って実感した。廣瀬は幼い頃は楽器とは無縁で運動が大好きだったが、高校時代はアメフト部に所属する体育会系で、慶應義塾大学を卒業後には海外で仕事がしたいと政府系の銀行へ。アジアや中東でインフラ開発の大きなプロジェクトにも参加した。社会人2年目で結婚し、その相手は島村の三女だった。島村楽器を継ぐ気はなかったというが結婚して三年目に島村から会社を継いでほしいと持ちかけられた。考えた末に2004年に入社した。まず楽器を弾く客の気持ちを知ろうとギターを習い始め、店で扱うあらゆる楽器に精通しようと猛勉強していた。頑張ってカタログを読み、初めてキーボードが売れたという。しかし数日後にそのお客が店にやってきたという。