- 出演者
- 村上龍 小池栄子
オープニング映像。
ある調査によるとコロナの自粛期間中に楽器を始めた人の内訳では4割の人が未経験者。また8割以上の人が今後も続けたいと答えた。今回のテーマは音楽。幕張のイオンモールに店を構える島村楽器は様々な楽器を取り扱う総合楽器店。ピアノやギターの品揃えは200本以上。一流ブランドの高級楽器からお手頃のものも。また若者だけでなく子どもや高齢者も楽器と出会う機会をつくるために商業施設のみに出店。総合楽器店として日本一の売上を記録。さらに島村楽器は自社のオリジナル楽器も作っていて、ヒストリーというギターはあいみょんが紅白初出場のときに使用したプロも認める品質。他にもエレキギターやサックス、ベース等様々なオリジナル楽器を揃える。そして島村楽器の大きな特徴はほとんどの店で音楽教室を併設している。また音楽教室の数でもヤマハ音楽教室やカワイ音楽教室より少ないが、生徒の増加率は島村が上回る。選ばれる理由にはマンツーマンのレッスンで、このようなインストラクターは直接島村楽器が雇用している社員。一般的な音楽教室では講師の多くは業務委任契約でレッスンの日時が固定されている。生徒がその時間に合わせる必要がある。島村楽器のインストラクターは、社員なので休日以外は店にいるために生徒は予約があいていれば都合の良い時間にレッスンを受けることができる。
東京・小岩にあるライブハウスでは島村楽器の社員による演奏会が行われていた。その楽屋には島村楽器社長の廣瀬利明の姿が。2013年に島村楽器の二代目社長に就任し、少子高齢の中抱いたのは危機感。楽器を演奏する人口は減っていくだろうと答え、テレビゲームのようにすぐには上手くできないのが楽器をやめてしまう一番の理由だという。島村楽器の調査によると、ギターを購入した人の8割が1年以内に挫折。そこで廣瀬が掲げた戦略は、楽器プレーヤーのトータルサポート。楽器を始める人を増やしいかに長く続けてもらえるかどうか。そのトータルサポートには初心者を挫折させない。半年前からギターに挑戦している女性はこれまでも何度も挑戦したがその度に挫折してしまう。今回続いている理由にはギターセンパイというサービスを使用している。オンラインの動画サービスで、600曲を越える曲の中で5つのステップを踏んで練習ができる。弦を指一本で抑えるところからスタートし、ステップを踏む事に弾けている感覚が強くなるという仕組みだという。
ギター編に続きピアノ版も開発している。曲が弾けるようになると誰かと演奏がしたくなる。そこで、島村楽器のサポートでは仲間とセッションできるように後押し。週末には大宮の音楽教室に集まっていた人々が。初めて会った人同士が集まって行うのはオトナカマというサークル活動。やりたい人が参加し、機材は店舗スタッフが用意。さらに足りないパートはスタッフが加わってくれるという。集まる人達の性別や年齢もレベルもまちまちだがそれでもセッションする楽しさが味わえる。うまくなると人に聞いてもらいたくなるが、島村楽器では教室の生徒たちが成果を発表する演奏会を定期的に開いている。さらにゴージャスな舞台には、クラシック音楽の殿堂のサントリーホールなどでの演奏会も行うことができる。こうしたトータルサポートで島村楽器は絶好調。コロナ禍で一時売上は落ち込んだがその分を取り返し成長を続ける。
廣瀬は島村楽器でオリジナル楽器を出そうと思ったきっかけについては創業者がユニクロ無印良品がSPAで自社ブランドの商品を出して成長していたのを見ていたので自社もSPAをしなければ企業として成長できないと考え20年前から行ってきたという。またショッピングセンターに出店する理由には店にはドアがなく、演奏ができない人には楽器店が怖いなど思う人がいるという。ショッピングセンターに出店を初めて気づいたのは書店やCD店と一緒に入れ、初心者でも気軽に入ることができると気づいたという。またコロナ禍で楽器を演奏する人が増えたという話では、30年前ほどは若い人か、子どもが親に買うケースが多かったが今では、趣味で演奏する人が増え、50代や80代など高齢者も多いという。
千葉市の中学校の吹奏学部に島村楽器の社員の姿が。この日は生徒の使用している楽器のメンテナスにやってきた。取引がある学校を定期的に訪ねて簡単な修理を行い手入れも行う。先輩から後輩に受け継がれる楽器を大切に扱ってほしいと、長年続けているという。島村楽器は昭和初期に江戸川区の平井の文具店が始まり。創業者の島村元紹が文具店内にヤマハ音楽教室のフランチャイズを開いたのを機に1969年に島村楽器を創業した。島村が大切にした精神は、物を売る前にコトを売り、コトを売る前に人を売る。ギターを購入してきた客の数だけギターに託す思いがあり、接客を通して思いを汲み取り、思いに叶うギターを提案。ただ物を売るのではなく、客の音楽ライフを支える信頼される人であれというメッセージだという。そんな商業者の精神を廣瀬は入社後に身を持って実感した。廣瀬は幼い頃は楽器とは無縁で運動が大好きだったが、高校時代はアメフト部に所属する体育会系で、慶應義塾大学を卒業後には海外で仕事がしたいと政府系の銀行へ。アジアや中東でインフラ開発の大きなプロジェクトにも参加した。社会人2年目で結婚し、その相手は島村の三女だった。島村楽器を継ぐ気はなかったというが結婚して三年目に島村から会社を継いでほしいと持ちかけられた。考えた末に2004年に入社した。まず楽器を弾く客の気持ちを知ろうとギターを習い始め、店で扱うあらゆる楽器に精通しようと猛勉強していた。頑張ってカタログを読み、初めてキーボードが売れたという。しかし数日後にそのお客が店にやってきたという。
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島村楽器に入社したての頃に廣瀬は初めてキーボードを売ったという。しかし数日後にそのお客が店にやってきたが、そのお客は初心者向けの楽譜が欲しく、接客が良かったので選んでほしいとお願いしてきたという。廣瀬はお客に必死に役立とうと思って接客すれば通じるんだと体感できたというが創業者の言葉を実感できた瞬間だったという。2013年に廣瀬は二代目社長に就任。しかし二期連続で減益で苦しい船出に。そんな時、経済誌の記事でミシュランが販売後のアフタフォローのサービスを始めたという内容を見たが、廣瀬は自分たちはその付加価値をつけられるかという点では十分ではなかったと感じたという。それまで楽器のメンテナンスやイベントは軽視しがちだったが、楽器を長く続けてもらうには、売った後が重要と気付いた。廣瀬はピアノやギターなど、楽器ごとの資格制度を設け、店舗で行っていたスタッフの育成を社内で統一した基準として明確化。上級試験に合格すれば上級アドバイザーの称号が与えられ客からも頼りにされるという。スタッフの育成が進み、ギターの弦の交換のサービスや楽器に対しての無料相談なども充実している。
廣瀬は接客を通してあなたが言うのだから信用すると言われるまでいくことが信頼される販売スタッフだと答え、創業者の言葉に詰まっていると答えた。また資格制度を導入したことについてはいろいろな楽器の専門知識がないとお客には信頼されないと語った。しかし導入当初は不評ばかりで現場で接客をして覚えなければいけず、頭でっかちな資格制度を作ってもという雰囲気があったと答えた。しかし自分の得意分野だけ突き詰めるのは本当に総合楽器店と言えるのか?と思ったという。島村楽器の本社にある倉庫にはたくさんのオリジナル楽器がある。品質は問題ないが店頭に並ぶことはない役目を終えた楽器が並ぶ。
さいたま市にある児童養護施設では様々な事情で親と一緒に暮らせない子どもたちが過ごしている。ここには音楽クラブがあり子どもたちでセッションしているという。島村楽器から贈られた楽器を演奏する子どもたち。島村楽器では楽器の試作品やサンプル品を全国の児童養護施設に無料で提供している。捨てるはずだった楽器を無償で提供することで、音楽仲間を一人でも増やしたいと考えた。廣瀬はこうした活動について経営理念では音楽を楽しむ人を一人でも多く作るということで、ダイレクトにその活動ができる事を考えた時に養護施設に入っている子どもは楽器を手にすることが難しいので楽器を始める機会を提供したいと考えたという。
宮間さんは妻のためにサックスを練習し、演奏を披露したいと妻の前でその成果を発揮した。
村上は今日の総括に楽器をやる人は「ブルジョワ」だと思う。知り合いに、音大出でピアノの講師をやりながら、和物の三味線で名取を取り、今はバイオリンをやっているという人がいる。宝石やファッションには興味がないらしい。もう死語だが「ブルジョワ」だなと。普通の楽器屋は楽器を売るために教室を開くが、島村は音楽教室を継続してもらうために楽器を売る。音楽の世界は音楽そのものが中心で、そのために必要な道具として楽器を買う。楽器は、習得には長い時間を必要とする。その一端でも味わえばすでにブルジョワだ。とした。
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カンブリア宮殿の次回予告。