15年前の東日本大震災では首都圏で公共交通機関が止まり駅は行き場を失った人などで溢れかえった。当時品川区のオフィスで働いていた堤知佳さんは、とどまるか迷った末、約20キロ離れた川崎市の自宅まで同僚と一緒に歩いて帰った。その日はタイトスカートにヒール付きの靴で、途中スニーカーを購入して履き替えたが厳しい道のりだったと記憶している。当時まだスマートフォンは普及しておらずわかりやすい大通りを歩いたため川崎市内に入るまで1時間近く余分に歩いていた。途中一番困ったのはトイレだった。営業している店は少なく辺りが暗く中、堤さんは不安な気持ちを抱えて歩いていたという。首都直下地震の新たな被害想定で地震発生当日家に帰れなくなる帰宅困難者は首都圏全体で840万人に上ると試算されている。これらの人々が一斉に帰宅すると集団で転倒して二次被害に巻き込まれるほか、歩道から溢れて緊急車両の通行を妨げるおそれもある。そこで国や自治体が呼びかけているのは、すぐに家に帰らずその場にとどまるという行動。去年千葉市で行われた訓練で、駅に滞留した約50人が向かった先は公共交通機関が動くまでの間とどまることができる一時滞在施設。千葉市では帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設が公共施設と民間事業所合わせて25か所ある。千葉駅から2kmほど離れた銀行には市から提供された毛布や水が備蓄され240人が3日間過ごすことができる。2階にある大ホールはスペースを小分けにすることで妊婦や小さな子ども連れなども安心して過ごすことができる。外国人対応にはタブレットも活用。千葉市の試算で市が指定している一時滞在施設で収容できる人数は約1万4000人。一方想定される帰宅困難者の数は市内の主な4つの駅だけで7万2000人と5倍以上に上り数が不足している。土地勘のない多くの人を誰がどのように誘導し施設に分散させるのかなど具体的な取り決めもない。最寄りの一時滞在施設は各自治体のホームページなどに記載されている。東京都では交通機関が一斉にストップした際にはLINEを通じて最寄りの一時滞在施設やルートを検索できるサービスの運用を行うという。
