あさま山荘事件の翌年、テレビの影響力が想像を超える事態を引き起こす。日本中の小売店がパニックに陥ったトイレットペーパー騒動の背景にあったのは中東の戦争の影響で原油価格が高騰したオイルショック。物価上昇や物不足への不安が高まる中、トイレットペーパーなどの日用品を買いだめする現象が突然、全国に広がった。騒動の発端は大阪の新興住宅地の千里ニュータウン(大阪・豊中市)で広がったささいなうわさ話だった。うわさが広がった背景には新興住宅地ならではの事情があった。当時、最新設備として導入された水洗トイレ。トイレットペーパーは切らすわけにはいかない必需品になっていた。うわさ話から生まれた大行列。偶然、トイレットペーパーの特売セールを始めたスーパーに人々が殺到していた。メディア史の研究者でデマや風評による影響を検証してきた上智大学文学部新聞学科・佐藤卓己教授はインパクトのある映像を優先するテレビ報道は50年以上たった今も同じ現象を生み出す可能性があると指摘。コロナ禍の2020年にもトイレットペーパーを巡るニュースが報じられた。発端となったのはSNS上のうわさ。佐藤教授はSNSの影響力が高まっているからこそテレビには果たすべき役割があるという。