能登半島地震で被災した石川県輪島市の老舗豆腐店で3代目の男性が困難を乗り越え移動販売を再開した。仮設住宅に届けられる変わらぬ味が被災した住民の心のよりどころとなっている。「さいはての谷内のおとうふ」は、石川・輪島市で約60年、販売を続けてきた。元日の地震では工場の中にある機械の多くが倒れるなどして稼働できず、約3か月間の休業を余儀なくされた。13人いた従業員も半数近くが退職。店は一時、存続の危機に立たされた。仮設住宅の完成に伴い、町には少しずつ人の姿が戻りつつあった。さいはての谷内のおとうふ・谷内孝行3代目が豆腐を積んで向かった先は、工場から車で20分ほどの距離にある南志見地区。谷内さんにとって初めての移動販売で訪れた思い出の場所。今年に入って初めてとなる地元輪島での移動販売。仮設住宅の表札を頼りに常連客を探して回る。トラックを囲むように住民たちが続々と集まってきた。昔ながらの行商スタイル。地震で離ればなれになった集落のつながりを再び取り戻す手段となりつつある。谷内さんは「今まで食べていた豆腐を届けることが、自分なりの復興に近づけるのかな」と語った。