厚生労働省はきょう、将来的に基礎年金を底上げするための案を示した。見直されるのがマクロ経済スライドと呼ばれる仕組み。物価や賃金の上昇率よりも年金の給付水準を低く抑える仕組みだが、どう見直されようとしているのか。2015年度に初めて発動されたマクロ経済スライド。厚生労働省が社会保障審議会の部会で示した案によると、基礎年金では一定の経済状況を前提に2057年度までと見込まれる抑制を続ける期間を、2036年度までに短縮するとしている。抑制措置が長期化すれば、その分、給付は減り続けることになるから。厚生労働省の試算では、過去30年間と同じ程度の経済状況が続いた場合、2057年度の基礎年金の給付水準は、今より3割低下するとしている。気になるのが、必要になる財源。案では、比較的財政が安定している厚生年金保険料の積立金からの拠出や追加の国庫負担で賄うとしている。在職老齢年金と標準報酬月額の上限についても、見直しの検討が進められている。在職老齢年金は、一定の収入がある高齢者の年金を減額する仕組み。高齢者の働く意欲をそがないよう、減額となる基準額を現在の50万円から62万円や71万円に引き上げるか、制度そのものを廃止するかのいずれかで協議を続けることになった。一方、一定の収入を超えると厚生年金の保険料の支払いが増えなくなる標準報酬月額。経済力の高い人には、より多く負担してもらう必要があるとして、上限を現在の65万円から引き上げる方針で、具体的には4つのいずれか。保険料収入は年間で4300億円〜9700億円増えると試算される。厚生労働省は、年内にも最終的な年金制度改正案をまとめ、来年の通常国会に法案を提出したい考え。