引退が発表されたのは、ドクターイエロー。新幹線の線路などを検査する専用車両として「新幹線のお医者さん」とも呼ばれている。走行は10日に1度ほど。一般客は乗ることができず、見ることもなかなかできない。現在は、JR東海とJR西日本が1つずつ保有。ドクターイエローが人気を集める理由の一つが、「見かけると幸せが訪れる」といううわさ。乗り物に関するニュースサイトを運営する企業では5年前、ドクターイエローの目撃体験についてアンケートを実施。1500人ほどから回答が寄せられた。乗り物に関するニュースメディア・中島洋平編集長は「(ドクターイエローは)裏方。本当だったら人知れず仕事する車両だったが、ものすごく市民権を得て夢位になっている。鉄道車両の中では“幸せな車両”なのでは」と語った。引退する前に、ドクターイエローを見たい。ただ時刻表も公表されていない中で、どうすればいいのか。話を聞いた滋賀県の写真愛好家・西村勲さんは、18年ほど前から撮影をしてきた。その経験を生かして、独自に時刻表を作った。撮影した日時やSNS上の目撃情報などから、走行日時を予測。これまで近所の幼稚園などに配って、幸せを届けてきた。西村さんは「“ドクターイエロー”を通じて友達の輪が増えたことは宝物のひとつ。最後の姿、白い節減の中を真っ黄色な列車が走り抜けるのを撮りたい」と語った。ドクターイエローの運行が始まったのは1964年。東海道新幹線開業の年だった。1974年には、日本で最初の新幹線「0系」をベースにした車両が投入された。訪れたのは、過去に使われた車両が展示されている施設を取材。JR東海リニア鉄道部・森岳志さんは「夜間、走ったりするとき目立つように黄色を選んだと聞いている」と語った。車内には、架線の状況を確認するカメラを設置。安全運行を保つため、走行しながら線路などの検査を行っている。引退は老朽化などが理由で、JR東海は来年1月に、JR西日本は2027年をめどに運行を終える。森さんは「安全を守る役割を持ちつつ、皆さまとつなぐ役割も持っていた」と語った。