阪神淡路大震災から2か月半後、大阪府和泉市では震災で結婚式を挙げられなかった3組のカップルのために、ボランティアが手作りの式を用意した。このときに式を挙げた1組の夫婦が感謝の思いを伝えるため、30年越しに当時の恩人を訪ねた。式を挙げた平石悟史さんと知子さん夫婦は、兵庫県三木市で美容室を営んでいる。震災が起きたのは、悟史さんが駆け出しの美容師として働いていたとき。2か月後に結婚式を控えていた。式に参列する予定だった祖母の文子さんは、震災で亡くなった。悲しみに暮れ、式を諦めていたとき、ラジオから聞こえてきたのが“手作りの結婚式が開かれる”という知らせだった。2人には、30年経った今も忘れられない人がいる。結婚式のときに付き添ってくれていた、和泉市職員の出合優仁さん。出合さんは当時、被災地に物資を届けるなど支援活動を続けていたが、その中で結婚式を挙げられないカップルがいると知り、同僚と手作りの式を企画。市民にも呼びかけたところ、応援したいと多くの声が上がった。ボランティアの力を合わせて実現した2人の結婚式。その後、夫婦の間には3人の子どもが生まれた。震災当時、おなかにいた長女の綾乃さんは今、美容師として一緒に店に立っている。子どもたちが成長し夫婦の時間が増える中、ずっと抱えていた感謝の気持ちを改めて伝えたいと思うようになった。震災からまもなく30年。2人は初めて和泉市の出合さんの家を訪ねた。出合さんが2人に伝えたのは、式を陰で支えてくれた人たちの話だった。結婚式を支えてくれた人たちの思いに触れた悟史さんは「いろんな30年間の思いがわっと出てきましたね。当時、結婚式てんやわんやしていたので、そんな裏のことまで全然知らなかったので、本当にありがたかったんだなとしみじみ思った」と述べた。
住所: 大阪府和泉市府中町2-7-5