国立印刷局には工芸官という国家公務員が存在し、新紙幣のデザインにも携わっている。普段は収入印紙や自治体の証明書台紙のデザインの経験を積みながら約20年に1度しかない新紙幣に携わる機会に備えてきたという。紙幣偽造の犯罪に巻き込まれないために常に匿名であり経歴なども秘匿情報であり、家族に対しても仕事の話をすることは認められず退職後も含め守秘義務が課せられるという。製品デザイン・彫刻・線画デザイン・すき入れという4部門から構成されていて、製品デザインは筆や鉛筆を使ってお札の原図を作成するものでここでのデザインが設計図となる。彫刻は原図を元にビュランという特殊な彫刻刀を使って金属板に点や選を1本1本刻み原盤を作成していく。背景の模様や彩文という幾何学模様はコンピューターを使って描かれる。そして、光にすかすと浮き出るすき入れという加工を加えて偽造を防いでいく。デッサン力の高い人を採用する必要があり、高度な技術であることから技能を伝承する必要がある。また、彫刻は1ミリの幅に10本以上の線を彫っていくほどの技術力が求められるのだといい、1万円札の福沢諭吉の目は約1ミリほどだが、ここには12本の線が彫刻される様子が見られる。そして、今回の新紙幣はユニバーサルデザインが特徴で、アラビア数字を大きくすることで年齢や国籍を問わずに使えるようにしたことや、目の不自由な人でも券種が分かるようにそれぞれ券種ごと違う位置に11本の斜線の入れているのだという。今後はキャッシュレス化が進んでいくので、大規模な紙幣の更新は今回が最後になる可能性もあるという。