今回の平和サミットで議題の1つに挙げられているのが、連れ去られた子どもの帰還。先週、支援団体を通じて、2年ぶりにウクライナに帰国できた17歳の少女。少女はおととし夏、住んでいた地域がロシアの支配下に置かれ、キャンプに参加したところロシア南部の町に連れていかれ、そこで暮らすよう求められた。なんとか帰国しようと支援団体と連絡を取っていたが、ロシアの情報機関に携帯電話を取り上げられた。さらに、うそ発見器にかけられ、ウクライナ軍に知り合いがいないかなど尋問を受けたという。ウクライナ政府によると、連れ去られた子どもは特定できたものだけで1万9546人に上り、このうちこれまでに帰国できたのは僅か388人にとどまるという。一方、ロシアのプーチン政権は“強制ではなく、戦闘地域の子どもたちを保護しているだけだ”などと主張。ただ、軍事侵攻後に署名した大統領令では、ウクライナ国籍の子どもを養子にする手続きなどを簡素化していて、占領地の子どもたちを自国民にする企てだとも指摘されている。ICC(国際刑事裁判所)は、“こうした状況は戦争犯罪に当たる”として、去年3月、プーチン大統領などに逮捕状を出している。連れ去られた子どもの救出に取り組んでいるNGO「セーブウクライナ」。これまでは、ロシア側で公開される里親の募集や養子を扱った記事などから、子どもの居場所を特定し帰国につなげてきた。しかし、ロシア側が子どもの情報を隠すようになり、特定するのがより難しくなっていると訴える。子どもの中には、心の傷に苦しむケースも。おととし連れ去られ、去年11月に帰国した青年。ロシアに滞在中、“ウクライナはネオナチだ”などと聞かされ続け、洗脳されるような言動に苦しめられたという。救出に当たるNGOも帰還した子どもたちのケアに力を入れている。