ロッキード事件の関係者を武者小路実篤が好んだ野菜の絵になぞらえたり、郵政民営化にこだわった小泉純一郎氏をポストで表現してみせたりした風刺漫画家の山藤章二さん。彼のモデルとなった者たちが怒らなかったのは「苦笑いをさせられるような傑作を作ってしまえば文句ない」からだという。時の権力者や著名人たちも山藤さんに描かれて一流という風潮さえ生まれた。山藤さんのセンスを絶賛するのは山藤から似顔絵塾を引き継いだ松尾貴史。坂本龍一やビートたけしの作品を紹介。安倍寧氏は「僕だけをからかうのではなく、僕の背後にある1970年代~80年代はどういう年代だったのかという時代の背景まで見抜いて風刺画にしている」と指摘。時代を見抜く目とそれを表現する妙技、そして被写体を見つめる愛があった。山藤は生前「人間には誰しもどうにもならない業があり、それを肯定するからこそ通じ合うことができる」などと話していた。