ムジナモはプランクトンなどを捕食する食虫植物。埼玉県内では羽生市の宝蔵寺沼に自生していたが、50年以上前に姿を消し、県のレッドデータブックでは「野生絶滅」に分類されている。羽生市や地元の保存会などは、沼で15年以上にわたって「ムジナモ」を育て、天敵のウシガエルを駆除するなど環境を整えた結果、110万株を超えるほどに増え、自然の状態で繁殖していることが確認された。来年3月に改訂する埼玉県のレッドデータブックで、ムジナモの分類を現在の「野生絶滅」から、1つ下のランクの「絶滅危惧1A類」とする方針となったことが、県への取材でわかった。「野生絶滅」としていた動植物が、自然に生息する「野生復帰」となるのは埼玉県内では初めて。環境省によるとほかにはトキが野生復帰した際に、国のレッドデータブックを改訂した例があるという。水生植物に詳しい国立科学博物館の田中法生研究主幹は「(野生絶滅とされた植物が絶滅危惧種に移行)私が知るかぎり初めてで、極めて珍しい。地元の関係者がムジナモを大切に育てた結果だ」と話している。