カブトムシを通じて新たなビジネスが生まれ、地域活性化につながるかもと期待されている。福岡県南西部の大木町でスタートアップ企業が進めているのが、世界中のカブトムシの繁殖。希少価値の高い6種類を観賞用に、高いものでは18万円で販売している。さらに日本のカブトムシの幼虫を魚や家畜の餌の原料として出荷している。さらに、カブトムシが地元特産のキノコ栽培に役立っているという。シメジなどを収穫したあとに出てしまう廃菌床。町で発生する量は年間1万トンで、処分するにもお金がかかるやっかいものだったが、これがカブトムシの幼虫の餌に最適だった。さらに、幼虫が排出するふんには窒素が多く含まれて、農業用の肥料にもなる。これを廃菌床を提供してくれた農家に使ってもらうことで、キノコ栽培のコストを大幅に下げることができている。カブトムシを中心にした循環型のビジネスには、行政も期待をかけている。3月、大木町はスタートアップ企業と協定を締結した。町が採用した地域おこし協力隊のメンバーをこの企業に派遣する形で支援している。今後、町が養豚場として使っていた施設をカブトムシの大量生産プラントに活用して5万匹〜10万匹、繁殖させる計画を立てている。日本は世界でも有数のカブトムシ好きが多い国で、ペット用としてだけでなく研究も進んでいる。紹介したスタートアップ企業は、大手企業などと協力してカブトムシから油を抽出する技術の開発を進めているということで、カブトムシの秘められたパワーが今後さらに注目されるかもしれない。スタートアップ企業・石田陽佑CEOは「有機廃棄物や未利用の資源を活用する循環型の取り組みをカブトムシとやっている」と話す。キノコの栽培農家・廣松真輔さんは「よい原料ができて、キノコの培地として再利用する。大きなメリットがある」と語った。福岡県大木町・広松栄治町長は「これが1つのロールモデルとして確立できれば、地方にもいっぱい有機的な資源があるはず。そういった所にも広がっていく。期待しかない」とコメント。