まもなく、ことし分の申し込み期限を迎えるふるさと納税。ことしはある異変が起きている。駆け込み需要で寄付が急増するこの時期。自治体は大忙しで現在、作業に追われている。川崎市役所で職員たちが気をもんでいたのが市へのふるさと納税の寄付額。ふるさと納税の申し込みがピークを迎える12月は自治体にとって重要な時期だという。ふるさと納税、ことしはどんな返礼品を選んだのだろうかインタビュー。「みかん」「海産物」などの一方、目立ったのが返礼品に生活必需品を求める動き。大手仲介サイトでは返礼品に米を選んだ寄付件数がトップになったところも。トイレットペーパーを選んだ寄付も伸びていた。大手仲介サイト・加藤秀樹執行役員「今までは、ちょっといい物を頼もうという人がいたが、物価高が非常に深刻な問題になっている」。ことしの特徴、キーワードは「都市部の巻き返し」。個人が好きな自治体に寄付すると税の一部が控除されるふるさと納税。地方の税収増につながっている一方で、利用者が多い都市部の多くは税収減に悩んでいる。今年度、住民税の税収が減る見通しの自治体は多い順に横浜市で304億円、6位のさいたま市でも100億円を超える税収が流出(総務省まとめ)。今年度およそ54億円が流出した東京・江東区。これまでふるさと納税の制度に反対してきた江東区。しかし、税が流出し続ける状況を受けことし10月ついに参入した。力を入れているのは飲食店などで使えるポイント型の返礼品。ふるさと納税をした人には寄付額の3割が電子商品券としてポイントの形で付与される。対象となっている区内の飲食店や宿泊施設などでの支払いの際に現金の代わりに使うことができる。区によると2か月で数千万円が集まり、4割ほどはポイント型返礼品が占めているという。こうしたポイント型返礼品の取り組み。千代田区や大阪市などもことしから導入し、税収減からの巻き返しを図っている。江東区役所の映像。江東区・森澤友貴担当課長、レストラン運営企業・事業責任者・相磯亮さんのコメント。各自治体が工夫を凝らす中、川崎市でも返礼品を増やすことに力を入れている。川崎市は今年度、全国で4番目に多いおよそ136億円が流出。巻き返しのため去年、新たに設けたのがふるさと納税チーム。チームで取り組んだのが返礼品の数を増やすこと。ことし4月に400ほどだった返礼品は、およそ700になった。返礼品には自分たちの特色を生かしたものも。その1つが工場夜景ツアー。日本有数の工業地帯がある川崎市。SNS映えする工場夜景を食事を取りながら楽しむことができる。さらに地元の町工場の技術を生かした返礼品も。メーカーが生産する美容家電は去年から返礼品に加わった。都市部の巻き返しで激化するふるさと納税の獲得合戦。専門家は制度のあるべき姿を市民も考えていく必要があると指摘する。法政大学・平田英明教授「自分たちが住んでいる自治体が毎年毎年お金が入ってこないことで行政サービスを提供できなくなる。その質を下げざるを得ないことは、結局自分たちの生活環境を押し下げることになる。自分のお金がどう使われるのか、目を向けてほしい」。美容機器メーカー・渡部悠専務、川崎市資金課・大島崇担当課長のコメント。