東日本大震災のあと運転を停止していた宮城県にある東北電力の女川原子力発電所。13年半を経て今夜、2号機が再稼働した。事故を起こした東京電力福島第一原発と同じタイプの原発では初めての再稼働。女川原発2号機の中央制御室で核分裂反応を抑える制御棒を引き抜く操作を行い原子炉を起動させた。東北電力によると作業が順調に進めば今夜遅くにかけて原子炉で核分裂反応が連続する臨界状態になり、来月上旬には発電を開始する見通し。年間で使用量が平均的な一般家庭の約162万世帯分の電気を賄うと試算されている。13年前の東日本大震災。女川原発では震度6弱の揺れを観測。約13メートルの津波が原発に到達。地下の設備や外部電源などが大きな被害を受けたが、放射性物質が漏れることはなかった。震災の2年後、東北電力は再稼働に向けた審査を原子力規制委員会に申請。最大クラスの津波に備えて、防潮堤の高さを海抜29mにかさ上げするなど、安全対策を講じてきた。原子力規制委員会・更田豊志委員長は「女川原子力発電所2号炉の設置変更許可を決定する」と述べた。4年前、再稼働に必要な審査に合格。安全対策の追加工事なども行って、きょう再稼働した。東京電力福島第一原発と同じタイプの原発では初めての再稼働。東日本大震災の被災地で原発が再稼働したのも初めて。13年前に原発事故を経験した福島には再稼働のリスクを懸念する人もいる。この地域で漁業を営む石橋正裕さんは原発事故の翌年から漁を再開したが、水揚げ量は震災前の4分の1ほどにとどまっている。石橋さんは「万が一事故が起きた場合に福島の二の舞になってしまうんじゃないかと思うと慎重に考えるべきなのかな」と述べた。「再稼働するのであれば、十分な説明が必要だ」という声も。漁師・小野智英さんは「福島では事故が起きたらどうするのか事前に十分な説明がされていなかった」と感じている。福島第一原発と同じタイプの女川原発2号機では事故を踏まえた新たな対策が取られている。女川原発に設置された「フィルター付きベント」と呼ばれる装置。事故後に作られた規制基準では、このタイプの原発に対し設置が義務づけられている。原発事故が起きて内部の圧力が高まったときに気体を外に出して圧力を下げる。装置には放射性物質を抑えるフィルターがついている。ただ専門家は「装置は完璧ではない」という。長岡技術科学大学・山形浩史教授は「フィルターはついているが、放射性物質は少し出る。周辺地域に対して影響は大きなものがある。そういうことを肝に銘じて安全に取り組んでもらいたい」と語った。現在、国内にある原発のうち新しい基準の審査に合格し再稼働したのは、きょうの女川原発2号機で13基目。新潟・柏崎刈羽原発などが審査に合格していて、島根原発は12月に再稼働する計画。政府はエネルギーの安定供給に向け、原子力発電を最大限に活用する方針。安全の確保はもちろん、地元の理解が得られるよう丁寧な説明が求められる。