人手を確保するため、働き方だけでなく休み方改革も重要な課題になっている。それを実現するうえで1つの鍵とされるのが、従業員の多能工化。例えば製造業の場合、さまざまな業務があるが、複数の業務に習熟した多能工を育成することが休みの取りやすさにつながるという。取り組みを進めている自動車部品メーカーを取材した。愛知県にある従業員およそ70人のメーカーでは、モールと呼ばれるプラスチック製の部品を製造している。この会社では土日を休んだうえで、有給休暇の取得率は9割近くに上っている。休み方改革が実現できた理由は、多能工の育成にある。入社4年目の河村莉菜子さんは普段、出荷作業を担当している。取材した日は、ほかの担当者に出荷作業を任せて検査作業の現場に向かい、それまでの担当者と交代し品質チェックに取りかかった。こうした多能工を育成して、従業員どうしがフォローし合える環境を作ることで、会社全体として休みやすくした。会社は、さまざまなスキルを身につけてもらうインセンティブとして、担当できる業務の数が多いほど給料が上がる評価制度を導入した。河村さんは2年前、フォークリフトの資格を取得。それ以前は主に男性社員2人だけでやりくりしていた。給料が上がるならと取り組み始めた担当以外の業務。4年間で8つの資格を取得した河村さん。今ではおよそ70ある業務のうち、28を担当できるまでになった。このメーカーでは、多能工化の程度によって基本給が2万円ほど増加したケースも出ている。